こんなニュースがありました。日経平均は、この1週間で約3,700円、約5%下がりました。そして10月16日のアメリカでは、「恐怖指数」と呼ばれるVIXが、16.46から19.99へ上がりました。
日経平均は、日本の代表的な225社の株の値段をまとめた数字です。
今日は、このニュースを見ていきましょう。手がかりになるのは、恐怖指数(VIX)は「この先、株の値段が大きく動きそうだ」というみんなの心配の大きさをはかる数字、ということです。
そして、今回みんなを心配させたのは、AIの設備を借金で作る会社への不安でした。
この記事は「こういうことがありました → 今日はこれを学びましょう」の順で進みます。
こういうことがありました ― 日経平均が1週間で約5%下がった
日経平均は、10月9日の69,030.92円から10月16日の65,324.29円へ、1週間で約5%下がりました。いちばん大きく下がったのは10月15日です。

時間の順番に並べると、こうなります。
- 10月14日(アメリカ):アメリカの9月の物価が、1年前より3.7%上がったと発表されました。同じ日のアメリカで、AIに関係する会社の株が売られました
- 10月15日(日本):日経平均は67,744.29円から64,425.95円へ。約3,300円、4.90%下がりました。下がった幅は、これまでで3番目の大きさです。お隣の韓国の株の指数も7.57%下がりました
- 10月16日(日本):日経平均は65,324.29円へ。1.39%上がって、少し戻しました
- 10月16日(アメリカ):AIや半導体(コンピューターの頭脳になる部品)の会社の株が、また売られました。アメリカの株の値段を代表する数字の1つ、NASDAQ(ナスダック)は2.15%下がりました。そして恐怖指数のVIXが、16.46から19.99へ上がりました。日本時間では、10月17日の朝5時ごろのことです
そもそもどこ? ― 中東・アメリカ・韓国・日本
今回の話には、4つの場所が出てきます。中東で起きたことが、アメリカの物価を通って、日経平均などアジアの株に届きました。

地図の色の意味はこうです。
- 中東(オレンジがサウジアラビア、灰色がイラン):アラビア半島のまわりの地域です。ペルシャ湾の出口にあるホルムズ海峡は、世界の石油を運ぶ船がたくさん通る細い海の道です。10月14日には、この近くでコンテナ船が攻撃を受けて沈みました。サウジアラビアの石油の会社アラムコの建物も、攻撃を受けています
- アメリカ(赤):世界でいちばん大きな株の市場があります。今回、AIの会社の株が売られたのはここからです
- 韓国(緑):サムスンなど、AIに使う半導体を作る会社が多い国です
- 日本(青):私たちの国です
なぜ株が売られたのか ― 物価と、AIの借金の不安
中東で戦争が続いて原油が上がり、アメリカの物価が上がりました。そこから「借金でAIの設備を作る会社は大丈夫か」という不安が広がり、AIの会社の株が売られました。

つながりを順番に見ていきます。
- 1つ目のつながり:原油が上がり、アメリカの物価が上がった。ロイター通信は「アメリカ・イスラエルとイランの戦争が、エネルギーの値段を押し上げている」と書いています。つまり、中東の戦争で石油が高くなり、それがアメリカの物価にまで届いている、ということです。アメリカの9月の物価は1年前より3.7%上がり、ガソリンの値上がり(9.1%)が、上がった分の半分以上を占めました
- 2つ目のつながり:金利が上がりそうだ、という見方が強まった。アメリカの中央銀行(国のお金の元じめ)が、10月27〜28日の会合で金利(お金を借りるときのレンタル料)を上げる見込みは、約52%まで高まりました
- 3つ目のつながり:借金でAIの設備を作る会社への不安が広がった。金利が上がると、借金の利息(借りたお金に上乗せして返すお金)が重くなります。たくさんの借金でAIの設備を作っている会社ほど苦しくなる、という心配が出ました。この心配の大きさを数字にしたものが、今日の言葉のVIX(恐怖指数)です
復習:物価が上がると、なぜAIの株が売られるのか
第6回では、物価が上がると金利が下がりにくくなり、遠い先のもうけに期待して買われている株ほど売られやすい、という話を見ました。

第4回では、中央銀行は物価が上がりすぎそうなとき、金利を上げるブレーキを踏む、と見ました。第6回では、それを「未来のおこづかい券」にたとえました。銀行の利息が増えると、10年後にもらえるおこづかい券の人気が下がります。
同じように、金利が上がると、AIのように遠い先のもうけに期待して買われている株は売られやすくなります。くわしく知りたい方は、こちらからどうぞ。

今回は「借金」の不安が重なった
今回は、第6回の話に「AIの会社の借金は大丈夫か」という不安が重なりました。中心にいたのは、アメリカのコアウィーブという会社です。

コアウィーブは、AI用のデータセンター(計算に使うコンピューターをたくさん置いた建物)を貸している会社です。大きな設備を作るために、社債(会社がお金を借りるときに出す借用書)で、たくさんのお金を借りています。
楽天証券の記事によると、10月14日のアメリカで、コアウィーブの社債の利回りが約15%まで上がり、株は15%超下がりました。利回りが上がるというのは、その借用書が安く売られた、ということです。
つまり、「この会社は、借りたお金をちゃんと返せるのだろうか」と心配する人が増えた、ということです。この社債は、格付け(借金を返せるかどうかの成績表)で「B」という、危なめとされる段階でした。
この不安が、AIに関係するほかの会社の株にも広がりました。日本の楽天証券も、韓国のメディアも、アメリカの物価とAIの会社の借金の重さを、10月15日の下げの理由に挙げています。
10月16日のアメリカでも、コアウィーブの社債は3日続けて、経営が危ない会社並みの値段で売り買いされていました。
恐怖指数(VIX)は、どうやって決まる?
恐怖指数(VIX)は、アメリカの代表的な500社の株の値段をまとめたS&P500の「オプション」の値段から計算します。みんなが「この先、株が大きく動きそうだ」と心配するほど、数字が上がります。
オプションとは、「あとで、決めた値段で株を売り買いできる権利」のことです。株が大きく下がったときに損を小さくする、保険のような使い方ができます。
傘の値段で考えると
上の説明(恐怖指数は、株の保険のようなオプションの値段から計算するので、みんなが心配すると上がる)を、傘の値段にたとえてみます。

ある町で、天気予報が「あしたは大雨かもしれない」と言いました。町の人たちは、あわてて傘を買いに行きます。傘がどんどん売れるので、お店は傘の値段を上げます。実際に雨が降るかどうかは、まだ分かりません。
それでも、「降りそうだ」と思う人が増えただけで、傘の値段は上がります。
たとえの中のものと、本文の話の対応は次のとおりです。
- 傘が、株が下がったときの保険になるオプションにあたります
- 「あしたは大雨かもしれない」という心配が、株がこれから大きく動きそうだというみんなの心配にあたります
- 傘の値段が上がることが、恐怖指数(VIX)が上がることにあたります
だから恐怖指数は、「株が下がった」という結果ではなく、「これから大きく動きそうだ」というみんなの心配の大きさを表します。
日本の私たちには ― いまの19.99は高いのか
恐怖指数の目安は、10〜20がふだん、30を超えると警戒、40を超えるとパニックとされます。いまの19.99は、ふだんの範囲の上の端です。

これまでの大きな出来事のときと、くらべてみます。
- 2008年11月20日(世界の金融危機):80.86
- 2020年3月16日(新型コロナで世界の株が下がったとき):82.69。終わりの値段では、これがいちばん高い記録です
- 2024年8月5日(日本の株が大きく下がった日):取引の途中で65.73まで上がり、終わりは38.57
- 2026年10月16日:19.99
くらべると、いまの心配は、これまでの大きな危機のときよりずっと小さい数字です。ただ、1週間前(10月9日)は14.84でした。そこから見れば、心配がたしかに大きくなった1週間でした。
日本の私たちにとって、恐怖指数が役に立つのは月曜の朝です。アメリカの市場は日本の夜に開くので、金曜の夜にアメリカで恐怖指数が上がると、その心配は月曜の東京の市場に届きます。
週末にニュースを見るときは、日経平均だけでなくVIX(恐怖指数)も1つ見ておきましょう。月曜の東京の空気を、前もって知ることができるからです。
投資の目線で見ると ― 心配が大きい週の追い風・向かい風
金利が上がりそうで恐怖指数も上がる週には、借金が多い会社に向かい風が吹きやすくなります。

- 向かい風:借金で大きな設備を作っている会社。金利が上がると、借金の利息が重くなるからです
- 向かい風:遠い先のもうけに期待して買われている会社。第6回で見たとおり、金利が上がると売られやすくなります
- 追い風になりやすい:借金が少なく、いまのもうけがしっかりある会社。金利が上がっても、影響を受けにくいからです
ただし、VIX(恐怖指数)が上がった週は、どの会社の株も大きく動きやすくなります。だから、「何が理由で下がったのか」をニュースで確かめてから考えると、あわてて動かずにすみます。
※特定の銘柄(株を売り買いできる1つ1つの会社)をすすめるものではありません。
こうした「お金の守り方」の考え方をまとめた資料は、記事の最後に置いておきました。
今日の言葉 ― 「VIX(恐怖指数)」
VIXは、アメリカの株の「この先の値動きの大きさ」について、みんながどう予想しているかを表す数字です。みんなが心配するほど上がるので、恐怖指数と呼ばれます。

- 誰が出す:アメリカのシカゴにある取引所(Cboe)が出しています。正式に始まったのは1993年です
- 何から計算する:S&P500のオプション(株の保険のような権利)の値段から計算します
- 目安:10〜20がふだん、30を超えると警戒、40を超えるとパニックとされます
- 今回は:10月16日に16.46から19.99へ、21.45%上がりました
株の値段は「いま」の数字ですが、恐怖指数は「これから大きく動きそうか」というみんなの気持ちを数字にしたものです。だから、株が下がった日に恐怖指数も上がっていたら、「みんながまだ心配している」という合図になります。
反対に、株が下がっても恐怖指数があまり上がらなければ、「みんなは落ち着いている」と読めます。
よくある質問
恐怖指数(VIX)って何ですか
アメリカの株の「この先の値動きの大きさ」について、みんなの予想を表す数字です。S&P500のオプション(株の保険のような権利)の値段から、アメリカのシカゴにある取引所(Cboe)が計算しています。みんなが心配するほど上がるので、恐怖指数と呼ばれます。
いまの19.99は高いのですか
10〜20がふだん、30を超えると警戒、40を超えるとパニックとされます。19.99は、ふだんの範囲の上の端です。2020年3月16日の82.69や、2008年11月20日の80.86とくらべると、ずっと小さい数字です。
日経平均は、どれくらい下がったのですか
10月9日の69,030.92円から10月16日の65,324.29円へ、1週間で約3,700円、約5%下がりました。10月15日だけで約3,300円、4.90%下がり、16日は1.39%上がって少し戻しました。
中東の戦争のせいで下がったのですか
中東の戦争は、原油を通ってアメリカの物価を押し上げました。ただ、10月15日の下げの理由として報道が挙げているのは、アメリカの物価と、AIの設備を借金で作る会社への不安です。中東は、そのはじまりのところにあります。
コアウィーブは、どんな会社ですか
AI用のデータセンターを貸しているアメリカの会社です。大きな設備を作るために、社債でたくさんのお金を借りています。10月14日に、その社債が安く売られて利回りが約15%まで上がり、株も15%超下がりました。
ブラックマンデーと関係ありますか
日本では、10月16日に「ブラックマンデー」という言葉の検索が急に増えました。つまり、今週の株の下がり方を見て、昔の大きな下げを思い出した人が多かった、ということです。
ブラックマンデーは、1987年10月19日の月曜日に、アメリカのダウ平均(代表的な30社の株の値段をまとめた数字)が22.6%下がった日のことです。今年の10月19日も月曜日です。当時はVIXがまだなく、前の形の指数が150.19まで上がっていました。
今回の下げとブラックマンデーを結びつけた報道は、見つかっていません。
積み立てをしています。何を見ればいいですか
恐怖指数と、下がった理由の2つです。恐怖指数が30を超えていくのか、20より下に戻るのかで、みんなの心配が大きくなっているのか、落ち着いてきたのかが分かります。
そして下がった理由が、1つの会社の話なのか、金利のように多くの会社に届く話なのかを、ニュースで確かめます。アメリカの中央銀行の会合は、10月27〜28日です。
おわりに ― ニュースは、自分のお金の話です
日経平均が1週間で約5%下がった週から、恐怖指数(VIX)は「みんなの心配の大きさ」をはかる数字であること、そして今回の心配の中心がAIの会社の借金だったことを見ました。
第1回・第2回は中東の原油が、第3回はAIのお金が、第4回は金利が、第5回は韓国の半導体が、第6回はアメリカの物価が、第7回は会社の業績見通しが、私たちのお金に届くまでのつながりを見ました。
今回は、そのつながりの先で、みんなの心配がどれくらい大きくなっているかを数字で見る方法を学びました。
このシリーズのテーマは、世界で起きたことを1つずつ取り上げて、小学生でもわかる言葉で「今日はこれを学びましょう」と読み解くことです。
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