11月3日、アメリカで中間選挙があります。選ぶのは大統領ではなく、法律とお金の使い道を決める「議会」です。どちらが勝つかに、お金をかけて予想する予想市場では、民主党が下院(議会の2つの部屋のうちの1つ)をとる見方が92〜93%まで高まっています。
議会をどちらの党がとるかで、トランプ大統領の政策が通りやすいか、通りにくいかが変わります。投資家はそれを先に読んで、上がりやすい業種と下がりやすい業種を分けて売り買いします。
今日は、議会の組み合わせしだいで、どの業種に追い風が吹きそうかを、3つの組み合わせに分けて見ていきます。
11月3日、アメリカで議会を選び直す選挙があります
アメリカの中間選挙は、大統領の選挙がない年に行われる議会の選挙です。今回は下院の435議席すべてと、上院の一部が選び直されます。

いまの議会は、トランプ大統領の党である共和党が、下院でも上院でも多数を持っています。
- 下院:435議席。多数をとるには218議席が要ります
- 上院:100議席。いまは共和党が53議席、民主党の側(民主党と組む無所属の議員を含む)が47議席です。民主党が多数をとるには、47から51まで増やす必要があります
選挙の前の数字は、どれも民主党に有利なものでした。
- 世論調査(選挙の前に、どちらに入れるかを聞いてまとめた数字)では、調べた会社によって差はありますが、民主党が6〜11ポイントほど先に出ています
- 予想市場(10月30日更新)では、民主党が下院をとる見方が Polymarket で93%、Kalshi で92%。上院は2つとも68%です
- 過去の中間選挙では、大統領の党は下院で平均27議席ほど減らしてきました

ただし、予想市場は選挙の結果ではありません。アメリカの NBC は、全国で民主党への支持が4.5ポイントほど共和党側へ動けば、共和党が下院を守れる、という計算も伝えています。選挙の前の数字は「見方」で、まだ何も決まっていません。
そもそも何を選ぶ? ― 大統領ではなく「議会」
アメリカは、日本から太平洋をはさんだ東にある国です。首都はワシントンで、ここに大統領のいるホワイトハウスと、議会があります。

地図では、2つの国に色を付けました。
- アメリカ(赤):世界でいちばん大きな株の市場がある国です。使っているお金は「ドル」です
- 日本(青):私たちの国です
アメリカの政治は、大きく2つの党が争っています。
- 共和党:トランプ大統領の党です。税を下げることや、外国の品物にかける税(関税)を重く見ています
- 民主党:トランプ大統領に反対する側の党です
そして、国の決まりごとは、次の2つがそろわないと動きません。
- 大統領:政策を進める人です。議会が決めた法律に「待った」をかける力(拒否権)を持っています
- 議会:法律と、国のお金の使い道(予算)を決める場です。下院と上院の2つの部屋に分かれていて、どちらも賛成しないと法律になりません
大統領の任期は4年で、今回の選挙では選び直されません。だから今回の選挙は、大統領はそのままで、議会の多数がどちらの党になるかを決める選挙です。
なぜ株が動くのか ― 法律とお金の使い道が、通りやすくなるか、通りにくくなるか
議会の多数がどちらの党になるかで、税・関税・国のお金の使い道が変わりやすくなるか、変わりにくくなるかが決まります。会社のもうけはそこで左右されるので、投資家は選挙の前から、どの業種に追い風が吹くかを読んで売り買いします。
大統領と議会の多数が同じ党なら、大統領の政策は法律になりやすくなります。反対に、大統領と議会の多数がちがう党になると、大きな法律は通りにくくなります。この状態をねじれ議会といいます。
アメリカの CNBC は、ねじれ議会は大きな政策の転換が起きにくく、市場が一般に好む形だと整理しています。会社にとっては、急にルールが変わらないほうが、先の計画を立てやすいからです。
株の取引の世界でも、選挙はもう値動きの材料になっています。株の値動きに備える取引(オプション)の値段から見ると、市場は選挙の翌日のアメリカの株の揺れを、ふだんの1日の約1.2倍と見込んでいます。過去の中間選挙と、おおむね同じ大きさでした。
10月30日の株の下げは、選挙とは別の話
選挙の4日前の10月30日、アメリカの株は大きく下がりました。ただ、きっかけは選挙ではなく、AI(人工知能)に関わる会社の決算です。

- アメリカの主な会社500社の株をまとめた数字(S&P500)は、7,580へ1.82%下がりました
- ハイテクの会社が多い NASDAQ は、2.86%下がりました
- 10月29日の夜に Intel と Amazon が出した決算(3か月ごとのもうけの報告)が期待に届かず、AI のための大きな設備投資への心配が強まりました。Intel の株は28.6%下がっています
この下げを中間選挙のせいだと書いた報道は、見当たりませんでした。選挙の前でも、株を動かす力は、会社のもうけの話のほうが大きい、ということが分かる1日でした。
3つの組み合わせ ― 議会をどちらがとると、何が変わりそうか
議会の結果は、大きく3つの組み合わせに分かれます。どの組み合わせになるかで、通りやすくなる政策がちがい、投資家の読みも変わります。

投資家の読みとして、ここではアメリカの大手銀行バンク・オブ・アメリカ(BofA)のハートネット氏の見方を軸に並べます。どれも予想で、そうなると決まったわけではありません。
予想市場の見方(10月27日の時点)は、「民主党が両方」が63〜65%、「民主党が下院だけ」が29%、「共和党が両方」が10%弱です。
1つ目:民主党が下院だけをとる
大統領は共和党、上院も共和党、下院だけが民主党になる組み合わせです。ねじれ議会になり、大きな法律は通りにくくなります。
民主党の政策は、大統領の拒否権で止まりやすくなります。反対に、大統領の側も、大きな減税や大型の予算を通しにくくなります。ハートネット氏は、この組み合わせなら株は5%超上がりうると見ています。
議会が動かないことで、AI への投資の流れとドルの強さがそのまま続く、という読みです。
2つ目:民主党が下院も上院もとる
議会の2つの部屋を、どちらも民主党がとる組み合わせです。大統領の政策に、いちばん強く歯止めがかかります。
ハートネット氏は、この組み合わせなら株は10%超下がりうると見ています。税を上げることや規制を強めることで会社のもうけが減り、AI への投資の流れも危うくなる、という読みです。ただし、大統領は共和党のままなので、民主党の法律も拒否権で止められます。
上院には、60票がないと話し合いを打ち切れないしくみ(議事妨害)も残ります。民主党が両方をとっても、民主党の政策がそのまま法律になるわけではありません。
上院をとると、もう1つ変わることがあります。FRB(アメリカの中央銀行。国のお金の元締めとなる銀行)の理事の人事は、上院の承認が要ります。
カナダの銀行系の TD Securities は、上院を民主党がとれば、中央銀行の独立を損なうような人は理事になりにくくなると見ています。
3つ目:共和党が下院も上院も守る
いまと同じく、大統領も議会も共和党の組み合わせです。予想市場では1割弱と、少ない見方です。
ハートネット氏は、この組み合わせなら株は10%以上上がりうると見ています。
日本のネット媒体 DIME は、減税が進みやすくなり、国の借金が増えるという見方からドル高・円安(1ドルと交換するのに、前より多くの円が要ること)に振れやすい、という見方を紹介しています。
野村総合研究所の木内登英氏は、関税などの通商の政策が加速し、日本とアメリカの貿易の摩擦がまた起きやすいと見ています。
3つの組み合わせを、家の大きな買い物にたとえると
上の説明(大統領と議会の多数が同じ党かどうかで、政策の通りやすさが変わる)を、家族の大きな買い物にたとえてみます。

ある家で、お父さんが「新しい車を買いたい」と言い出しました。この家では、お財布を持っているのはお母さんとおばあちゃんで、2人とも賛成しないとお金は出ません。お母さんもおばあちゃんもお父さんの味方なら、車はすぐに買えます。
どちらかが反対の考えなら、大きな買い物は止まり、家のお金の使い方は今までどおりになります。2人とも反対なら、お父さんの考えはほとんど通りません。
近所の車屋さんは、この家族会議の結果を気にしています。車が売れそうなら、先に在庫をそろえておきたいからです。
たとえの中のものと、本文の話の対応は次のとおりです。
- お父さんが、政策を進めるトランプ大統領にあたります
- お財布を持つお母さんとおばあちゃんが、予算と法律を決める下院と上院にあたります
- どちらかが反対の考えで大きな買い物が止まる形が、ねじれ議会にあたります
- 家族会議の結果を見越して準備する車屋さんが、選挙の結果を先に読んで売り買いする投資家にあたります
結果はいつ分かるのか
投票は、日本時間で11月4日(水)の朝8時から、東の州から順に締め切られます。 アメリカの夏時間が11月1日に終わり、アメリカの東部と日本の時差は14時間に広がります。
ただ、すぐに全部が決まるとは限りません。下院は接戦の選挙区が多く、郵便の票を何日もかけて数える州もあり、1週間以上かかることがあります。2022年の中間選挙では、上院の多数が決まったのは12月でした。
オプションの取引を調べた Man Group のキーオ氏は、結果が決まるまで長引く場合を、市場はほとんど値段に入れていないと見ています。選挙の結果そのものより、結果が決まらない時間が長引くことのほうが、株の揺れにつながりうる、という見方です。
投資の目線で見ると ― 組み合わせで、追い風の業種が入れかわる
同じ選挙でも、どの組み合わせになるかで、追い風になりやすい業種と向かい風になりやすい業種が入れかわります。ここでは、アメリカの資産運用の会社の分析を、名前つきで並べます。
アメリカの資産運用会社 Man Group のキーオ氏は、オプションの取引から市場の見方を調べました。
- 民主党が大きく勝つ場合:病院や薬などのヘルスケアと、小売(お店)の株が上がりやすい。投資銀行・証券などの「株や債券の取引でもうける会社」は下がりやすく、航空宇宙・防衛は小さく下がりやすい
- 共和党が大きく勝つ場合:その逆の動き
アメリカの金融会社 Ameriprise のサグリンベネ氏は、9月14日の時点で、組み合わせごとに次のように整理しました。
- ねじれ議会:AI への設備投資が続くテクノロジーと、防衛や道路などに使われる機械(資本財)が有利
- 共和党が両方:石油・ガスと、銀行などの金融が有利
- 民主党が両方:国がお金をかける分野と、新しいエネルギーへの切りかえに関わる会社が有利。石油・ガス、薬をつくる会社、一部の大手のテクノロジーの会社には心配がある
ここで、2つの分析が食い違っているところがあります。Man Group は「民主党が大きく勝てばヘルスケアが上がりやすい」、Ameriprise は「民主党が両方なら薬をつくる会社に心配がある」と見ています。
同じヘルスケアでも、病院や保険の会社と、薬の値段の規制がかかりやすい会社では、受ける影響がちがうのかもしれません。2つの記事は、その中身までは書いていません。業種の読みは、出す会社によって向きが変わることがある、と見ておくのが安全です。
選挙のあとの株は、どうなってきたか
過去の中間選挙のあと、アメリカの株は上がった年が多くなっています。ただ、それが選挙のおかげだとは言い切れません。
アメリカの資産運用会社 Capital Group の調べでは、1950年以降、中間選挙のあとの1年でアメリカの株は平均15.4%上がりました。
一方で、銀行の US Bank は、統計で確かめると、中間選挙で株の成績にはっきりした差があるとは言えなかったと書いています。銀行の Truist も、選挙の結果より、会社のもうけや景気のほうが株を動かすと見ています。
業種の読みも、過去の数字も、「選挙だけで決まるわけではない」と書き添えられていることは、覚えておきたいところです。
日本とのつながり ― 関税と、AI の株
10月は、日本の株とアメリカのハイテク株が、ほぼ同じだけ下がりました。日経平均(日本の主な会社225社の株をまとめた数字)は5.19%、アメリカの NASDAQ は5.30%の下げです。

野村総合研究所の木内氏は、アメリカの選挙が日本に届く道筋を、2つ挙げています。
- 関税:民主党が議会をとるほど、関税への歯止めが効きやすくなり、日本にはプラスになりうる。いま日本の品物にかかる関税は、DIME によると原則12.5%、自動車は15%です
- AI:民主党が勝てば、州ごとに AI の規制が進む見込みがあり、アメリカの AI のブームが抑えられると、AI に関わる品物をアメリカに売る日本の会社と日本の株にはマイナスになりうる
同じ「民主党が勝つ」でも、関税ではプラス、AI ではマイナスと、向きが反対の話が同時に出てきます。どちらが大きく効くかは、日本の会社が何でもうけているかで変わります。
※特定の銘柄(株を売り買いできる1つ1つの会社)をすすめるものではありません。
今日の言葉 ― 「ねじれ議会」
「ねじれ議会」は、大統領の党と、議会で多数を持つ党がちがう状態のことです。

- 誰が:大統領と、議会の多数を持つ党が
- 何を:ちがう考えのまま
- どうなる:大きな法律が通りにくくなり、国のルールや予算が大きく変わりにくくなります
- 今回は:民主党が下院だけをとる「1つ目の組み合わせ」が、ねじれ議会になります
ねじれ議会は、政治から見ると「決まらない」状態ですが、会社や投資家から見ると「急に変わらない」状態でもあります。同じ状態でも、誰の目線で見るかで、よしあしの感じ方が変わる言葉です。
よくある質問
中間選挙では、何を選ぶのですか
議会の議員を選びます。下院の435議席すべてと、上院の一部です。大統領は選び直されません。
投票はいつで、結果はいつ分かりますか
投票はアメリカの11月3日です。日本時間では11月4日の朝8時から、東の州から順に締め切られます。ただ、接戦が多いと、議会の多数が決まるまで1週間以上かかることもあります。
どちらが勝ちそうなのですか
まだ決まっていません。予想市場(10月30日更新)では、民主党が下院をとる見方が92〜93%、上院は68%です。ただ、予想市場は選挙の結果ではなく、世論調査がずれれば結果も変わります。
ねじれ議会とは何ですか
大統領の党と、議会で多数を持つ党がちがう状態のことです。大きな法律が通りにくく、国のルールや予算が大きく変わりにくくなるのが特徴です。
民主党が勝つと、株は下がるのですか
見方が分かれています。バンク・オブ・アメリカのハートネット氏は、民主党が下院だけなら株は5%超上がりうる、両方なら10%超下がりうると見ています。一方で、選挙の結果より会社のもうけや景気のほうが株を動かす、と見る銀行もあります。
日本の私たちと、関係はありますか
日本の品物にかかる関税と、AI の株の動きを通して、つながりがあります。民主党が議会をとると関税への歯止めが効きやすくなる一方、AI の規制が進めば日本の株にはマイナス、という見方です。
10月30日にアメリカの株が下がったのは、選挙のせいですか
選挙のせいだと書いた報道は、見当たりませんでした。Intel と Amazon の決算が期待に届かず、AI への大きな投資を心配する声が強まったことが、きっかけと伝えられています。
おわりに ― 議会の組み合わせで、追い風の業種が入れかわる
アメリカの中間選挙のニュースから、議会の多数がどちらの党になるかで政策の通りやすさが変わり、追い風の業種が入れかわる、というしくみを見ました。今回は、大統領はそのままで、議会の組み合わせが3つに分かれます。
民主党が下院だけならねじれ議会、両方なら大統領への歯止めがいちばん強く、共和党が両方ならいまの政策がさらに進みます。
日本時間の11月4日の朝から、結果が少しずつ出てきます。どの組み合わせになったかと、そのあとヘルスケア・金融・エネルギー・テクノロジーの株がどう動いたかを見比べると、投資家がどんな読みで売り買いしていたのかが、数字で見えてくるはずです。
このシリーズでは、世界で起きたことを1つずつ取り上げて、小学生でもわかる言葉で読み解いています。
世界の動きに振り回されないための、お金の守り方は、こちらにまとめています。PDFマニュアル・動画セミナー・無料相談の優先案内の3つを、公式LINEで受け取れます。
