うまくいっている人のやり方をまねしても変わらないのは、まねしたところが本当の理由ではないことがあるからです。一緒に起きている2つの裏で、その両方を動かしている原因は、第3の原因と呼ばれています。
この記事では、早起きの鳥の寓話を通して、第3の原因の正体と、相関と因果を見分ける考え方をお伝えします。明日からできることは、まねしたくなったら「この人は、見えないところで何をしているんだろう」と1つ考えることだけです。
まねしてもうまくいかないのは、努力が足りないからではない
まねしたところが、うまくいく理由ではなかったのかもしれません。

うまくいっている人のやり方を、そのまままねしてみた。同じ時間に起きて、同じ道具を使って、同じように動いてみた。なのに、なぜかうまくいかない。そんなことはありませんか。
2つのことがいつも一緒に起きていると、私たちは、片方がもう片方を起こしている、と考えます。この人はこれをしていて、うまくいっている。だから、これをすれば、うまくいくはずだ。そう決めると話がすっきりして、すぐに動けるからです。
しかも、たいていは、目に見えるほう、まねしやすいほうを理由だと思います。
けれど、2つが一緒に起きているのは、どちらかが理由だから、とは限りません。裏にある目に見えない別のものが、2つを同時に起こしていることがあります。そのときに目に見えるほうだけをまねしても、何も変わりません。裏にあるものは、まねできていないからです。

私も、予備校で教えていたころ、前の席に座る生徒ほど成績がいい、と感じていました。でも、前の席に座らせたら成績が上がる、というわけではないんですよね。やる気のある生徒だから、前に座るし、成績も上がっていたんです。
第3の原因と、相関と因果
一緒に動いていること(相関)と、片方が片方を起こしていること(因果)は、別のものです。

一緒に起きている2つの裏で、その両方を動かしている原因は、第3の原因と呼ばれています。
この2つは、よく相関と因果という言葉で分けて話されます。一緒に動いているのが相関、片方が片方を起こしているのが因果です。
相関を見つけたとき、すぐに因果だと決めずに、この2つをまとめて動かしているものはないか、と一度だけ考える。それだけで、打つ手ががらりと変わることがあります。それがどういうことかを、ひとつのお話で見てみましょう。
寓話:早起きの鳥
早起きの鳥ほど虫をたくさんとる、と聞いた若い鳥たちは、早起きだけをまねしました。

ある森に、たくさんの鳥が暮らしていました。森では、昔からこう言われていたんです。早起きの鳥ほど、虫をたくさんとる。
たしかに、森でいちばん早く起きるのは年寄りの鳥でした。そして、いちばん虫をとってくるのも、その年寄りの鳥だったんです。

若い鳥たちは考えました。早く起きれば、虫がとれる。それなら、自分たちも、もっと早く起きればいい。若い鳥たちは、次の朝から、夜明け前に起きるようにしました。
ただ、寝る時間はいつもと同じまま。夜は遅くまで、枝に並んでおしゃべりを続けていました。

暗いうちに起きた若い鳥たちは、眠くてふらふらです。

目をこすっているうちに、葉っぱの裏の虫を見逃してしまう。早く起きたのに、とれる虫は少しも増えませんでした。それどころか、昼には枝の上でうとうとしてしまいます。

ある晩のことです。一羽の若い鳥が、おしゃべりの途中で、ふと森の奥を見ました。日が暮れたばかりで、空はまだうっすらと明るい。

その中で、年寄りの鳥は、もう巣にもどって目を閉じていたんです。

若い鳥は、そこで気づきました。虫がとれる原因は、早く起きることだと思っていた。でも本当は、早く寝ていたことだったんだ。年寄りの鳥は、早く寝ているから早く起きられる。よく眠っているから、朝も目がさえていて、小さな虫まで見つけられる。
早起きも、虫をたくさんとるのも、同じひとつのことからきていたんです。

次の晩から、その若い鳥は、日が暮れると巣にもどるようにしました。

すると、目覚ましのように、自然に夜明け前に目が覚めます。頭もすっきりして、葉っぱの裏の虫もよく見えました。

やがて、ほかの若い鳥たちも早く寝るようになり、森の朝は、元気な鳥の声でにぎやかになったんです。

若い鳥たちに見えていなかったもの
若い鳥たちは、朝の早起きだけをまねして、夜という第3の原因を見ていませんでした。

若い鳥たちは、怠けものだったわけではありません。早く起きる、といういちばんつらいところを、ちゃんとがんばっていました。ただ、目に見えるところだけをまねしていたんです。
年寄りの鳥が早く起きている姿は、朝、誰にでも見えます。でも、年寄りの鳥が早く寝ている姿は、夜、おしゃべりしている若い鳥たちには見えませんでした。早起きだけをまねしても、虫は増えません。
早起きも、虫をたくさんとるのも、よく眠っていることから生まれていたのですね。
これは、私たちの毎日にもそのまま当てはまります。
仕事で起きる第3の原因:スマホと集中、手帳と予定
仕事でも、目に見える原因だけを変えて、裏の第3の原因を見落としていることがあります。

たとえば、仕事になかなか集中できない。スマホばかり見てしまうからだ、と思って、アプリを消す。でも、やっぱり集中は続きません。

本当は、寝不足で疲れがたまっていたのかもしれません。疲れているから、集中も続かないし、スマホもついだらだら見てしまう。スマホも、集中できないのも、同じ疲れからきていたんです。

まねをするときにも、同じことが起きます。できる先輩が使っている手帳を、同じものに買いかえる。でも、予定はやっぱり崩れてしまう。

先輩は、もともと一日の終わりに、次の日の段取りを考える人だったのかもしれません。段取りを考える人だから、手帳もよく使うし、予定も崩れない。手帳を変えても、段取りを考える時間がなければ、同じなんですよね。
まねをする自分を責めなくていい理由
うまくいっている人のまねをするのは、うまくいく道を早く見つけようとしている証拠です。

ここで、ひとつほっとする話があります。うまくいっている人のまねをするのは、いちばん早く、うまくいく道を見つけようとしている証拠です。責めることはありません。
それに、目に見えるところは、裏にあるものを探すいい入り口になってくれます。朝が早い人を見つけたら、夜はどうしているのかを見てみる。同じ手帳を使っている人を見つけたら、いつそれを開いているのかを見てみる。
まねしたくなった気持ちは、そのまま本当の理由にたどり着く道しるべになるんです。
明日からは1つだけ:「この人は、見えないところで何をしているんだろう」
まねしたくなったら、ひと呼吸おいて、その人の見えないところを1つだけ考えてください。

誰かのやり方をまねしたくなったら、ひと呼吸おいて、自分に聞いてみてください。この人は、見えないところで何をしているんだろう、と。そして、もし聞けるなら、その人にたずねてみてください。「それって、いつ、何をしているんですか」と。
始める合図は、「自分もやってみよう」と思った瞬間です。
ひとつの見方として
まねしてもうまくいかないときは、夕暮れの森で、もう巣にもどっていた年寄りの鳥を思い出してください。
もちろん、これはひとつの見方です。見えているところをまねするだけで、うまくいくこともあります。早起きそのものが助けになる日もあるでしょう。
ただ、まねしてもまねしてもうまくいかないときには、夕暮れの森で、もう巣にもどっていた年寄りの鳥を思い出してみてください。本当の理由は、見えないところにあったのかもしれません。
よくある質問
第3の原因とは何ですか?
一緒に起きている2つのことの裏で、その両方を動かしている別の原因のことです。たとえば「早起きの鳥ほど虫をたくさんとる」では、早く寝てよく眠っていることが、早起きと虫の多さの両方を起こしていました。
相関と因果は、どうちがいますか?
相関は、2つのことが一緒に動いていることです。因果は、片方がもう片方を起こしていることです。相関があっても因果があるとは限らず、裏に第3の原因が隠れていることがあります。
第3の原因に気づくには、どうすればいいですか?
2つのことが一緒に起きているのを見つけたら、すぐに「これが原因だ」と決めずに、「この2つをまとめて動かしているものはないか」と一度だけ考えてみてください。
人のやり方をまねしたくなったときは、「この人は、見えないところで何をしているんだろう」と考えるのが近道です。
おわりに
この記事の内容は、絵と図でまとめた動画でもご覧いただけるようにしてあります。動画で見たい方はこちらです。
耳で聴きたい方へ。ラジオ「清水すばるの心のラジオ」の第7回でもお話ししています。
ほかの回の寓話は、note のマガジン「寓話でわかる自己啓発」にまとめています。

