11月1日から、外国人旅行者の免税のしくみが変わりました。お店ではいったん消費税込みの値段で払い、日本を出るときに空港で消費税の分を返してもらう「リファンド方式」です。
安心していただきたいのは、変わるのは外国から来た旅行者の払い方だということです。日本に住む私たちの買い物の値段は変わりません。
それでも、お金の話としては見ておきたいニュースです。外国人旅行者の買い物は、9月に百貨店だけで約496億円ありました。そのお金の流れ方が変わると、仕事が増える会社と、負担が増えるお店が出てきます。
今日は、新しい免税制度で、どんな会社に追い風が吹き、どこに負担が残るのかを見ていきます。
11月1日から、免税は「出国のとき返金」に変わりました
新しい免税制度では、外国人旅行者はお店で消費税込みの値段を払い、出国するときに税関で確認を受けてから、消費税の分を返してもらいます。
免税とは、外国から来た旅行者が日本で買って国へ持ち帰る品物について、消費税(買い物のたびにかかる、国に納める税金)をかけないしくみです。日本で使わずに持ち帰るので、日本の税金はかけない、という考え方です。
これまでは、お店のレジでその場で消費税を抜いた値段で買えました。11月1日に買った分からは、次の順番に変わりました。

- お店で:消費税込みの値段で払う(同じ店で1日に税抜き5,000円以上が対象)
- 出国のときに:空港や港で、パスポートを機械にかざして税関(国の出入りの荷物を確かめる役所)の確認を受ける。買った日から90日以内
- 確認がとれたら:消費税の分が返ってくる
気をつけるところもあります。飲み物や化粧品のような品物を日本の中で使ってしまうと、その分は返ってきません。また、確認はレシートごとに行われ、レシートの中の品物を1つでも持っていないと、そのレシートの分はまるごと返ってきません。
一方で、なくなった決まりもあります。これまで化粧品や食べ物には「1日1店50万円まで」という上限がありましたが、新しいしくみではこの上限がなくなりました。持ち出せる量までなら買えます。
そもそも、外国人の買い物はどれくらいあるのか
日本に来る外国人旅行者は、人数は少し減っても、1人あたりの買い物は増えています。
2025年に日本に来た外国人旅行者は約4,268万人で、これまでで最も多い人数でした。ところが2026年は、9月が約310万人で、前の年の9月より5.0%少なくなりました。
中国からの旅行者が約44.5%減ったのが大きく、中国の政府が日本への旅行に注意を呼びかけたことや、飛行機の便が減ったことが理由とされています。
それでも、使うお金は伸びています。数字で見ると、次のとおりです。

- 7〜9月の1人あたりの旅行の支出:約23万3,677円(前の年より6.1%多い)
- 9月の百貨店の免税売上:約496億円(前の年の9月より25.3%多く、9月としてはこれまでで最も多い)
- 百貨店で免税の買い物をした1人あたりの金額:約10万1,000円(18.3%多い)
人数が減っても売上が増えているのは、1人が使う金額が大きくなっているからです。韓国・台湾・香港の大型の連休に合わせた旅行が多かったことも、百貨店協会は理由に挙げています。
1年で見ると、免税での売上は全国で年約2兆円、2025年に外国人旅行者が日本で使ったお金は全部で約9兆4,549億円あります。日本のお店にとって、外国人旅行者は大きなお客さんです。
なぜ変えたのか ― 免税で買って、日本で売る人がいた
国が免税のしくみを変えた理由は、免税で買った品物を日本の中で売る「横流し」を防ぐためです。
これまでのしくみでは、レジで消費税を抜いて売ったあと、その品物が本当に国の外へ持ち出されたかを確かめるのが難しい形でした。そこを悪用して、免税で安く買った高い品物を、日本の中で転売(買った物を、もうけを乗せて別の人に売ること)する人がいました。
観光庁の資料では、2022年4月から2024年3月の2年間に、1回の入国で1億円以上を免税で買った人が690人いて、買った金額は合わせて2,332億円でした。この高額な人たちの9割近くは、税関の確認を受けないまま出国していました。
確認を受けた人も、ほとんどが買った品物を持っていませんでした。本来は払うはずの消費税は、そのまま払われずに出国されていました。
この抜け道をふさぐために、国は払い方の順番を逆にするリファンド方式に切り替えました。この抜け道と新しいしくみのちがいを、たとえで考えてみます。

新しいしくみを、「びんを返すとお金が戻ってくるジュース」にたとえてみます。昔の駄菓子屋さんでは、びん入りのジュースを買うときに、びんの代金を少し上乗せして払い、空のびんを店に返すとそのお金が戻ってくる、というしくみがありました。
- これまでの免税は、びんのお金を先にまけておいて、「あとで返してね」とお願いする形でした。返さずに持って行ってしまう人がいても、店はお金を取り戻しにくかったのです
- 新しい免税は、びんのお金を先に預かっておいて、びんを返した人にだけ戻す形です
このたとえの中の「びんのお金」が消費税の分、「びんを返す」が出国のときに税関で品物を見せることにあたります。先に預かるので、品物を国の外へ持って行かない人は、お金を受け取れません。
得する会社と、店に残る負担
新しい免税制度で仕事が増えるのは、返金の手続きを受け持つ会社です。お店には、消費税の分を返すまで立て替える負担が残ります。
立場ごとに、何が変わるかを並べてみます。

仕事が増える ― 返金を受け持つ会社と空港
旅行者に消費税の分を返す手続きは、専門の会社が受け持ちます。たとえばグローバルブルーという会社は、返金の額から手数料(手続きの代わりに受け取るお金)を差し引くやり方に変え、新しいしくみでは最大3%ほどを差し引くと報じられています。
J&Jタックスフリーという会社は、お店に入れる仕組みを無料にして、返金のときの手数料で回収する考えです。
手続きが増えた分が、そのまま新しい仕事になっています。日刊工業新聞のニュースイッチも、「対応の手間が新たなビジネス機会につながるとみられる」と書いています。
空港にも新しい窓口が増えます。日本円の現金で返してほしい人向けに、Cash Japan という会社(グローバルブルーの子会社)が、関西・神戸・中部・福岡・成田・新千歳の6つの空港で、11月1日から順番に現金での返金を始めます。
負担が増える ― 消費税を立て替えるお店
お店から見ると、よくなるところと、負担が増えるところの両方が出てきました。
よくなるのは、確認の手間です。これまでは、お店が「この人は本当に持ち出す人か」を気にしながら売る必要がありました。あとで税務署に「この免税は認められない」と言われると、お店が消費税を払うことになるからです。
実際に、大丸松坂屋百貨店は約4億円以上を追徴(あとから税金を取られること)され、2026年10月には、中古の高級腕時計を売る会社が加算税を含めて約5億8,000万円を追徴されたと報じられました。
新しいしくみでは、持ち出しの確認は税関が行うので、お店のこの心配は小さくなります。
負担が増えるのは、お金の立て替えです。旅行者に返す消費税の分を、お店は返金が終わるまで預かっておく形になります。会計の専門サイトの例では、1日の免税の売上が100万円なら、消費税の10万円が最長で90日ほどお店に置かれたままになります。
レジを新しいしくみに合わせて直す費用も、数十万〜数百万円かかる場合があるとされています。
返金の手数料をどちらが持つかでも、お店の対応は分かれました。ドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、全国の店で返金の手数料を無料にすると発表しました(空港で現金を受け取るときだけ有料)。
株はどう動いたか ― 「困る」とは読まれていない
では、免税の売上が大きいお店の株は、切り替えの前にどう動いたのでしょうか。

切り替えの直前の10月30日、日経平均が2.12%下がった日に、百貨店やドラッグストアの株は上がりました。日経平均は、日本を代表する225社の株価をもとにした数字で、日本の株全体の調子を見る物差しです。
- 三越伊勢丹ホールディングス:+1.81%
- J.フロントリテイリング(大丸・松坂屋):+3.09%
- マツキヨココカラ&カンパニー:+3.15%
- ラオックスホールディングス:−0.68%
10月1日から10月30日までの1か月で見ても、日経平均が約8%下がったのに対して、三越伊勢丹ホールディングスの株は約10%上がりました。この日の値上がりの理由は、報道では示されていません。
ただ、少なくとも「免税が変わるから、免税の売上が大きい会社が売られる」という動きにはなっていません。
業界の団体である全国免税店協会の秋田正紀会長も、10月22日の説明会で、ヨーロッパで同じしくみが始まったときは「非常にスムーズだった」と話し、しくみが変わって外国人の買い方が急に変わることは「あまりないのではないか」と見ています。
同じ免税のニュースでも、株を見ると「お店が困る」とは読まれていません。投資家が見ているのは、しくみの変化より、外国人1人あたりの買い物が伸び続けるかどうかだと考えられます。
日本の私たちに ― 取りこぼされていた消費税
新しいしくみで、取りこぼされていた消費税が取りやすくなります。これは日本に住む私たちの税金の話でもあります。
これまでも、免税の品物を持っていない旅行者からは、出国のときに消費税を取る決まりがありました。ところが2022年度は、取るはずだった22億円のうち、21.3億円が取れませんでした。お金を持たずに出国されてしまうと、あとから取るのは難しいのです。

リファンド方式では、先に消費税込みで払ってもらうので、持ち出さない人にはお金を返さなければよくなります。取りはぐれる形から、返さない形に変わったということです。
消費税は、国の大事な収入の1つです。免税で消費税をかけなかった額は、2024年で約2,000億円にのぼると、自民党の勉強会は発表しました。
その勉強会は2025年に、免税の廃止を含む見直しを提案し、全国免税店協会など10の団体は「国際競争力を損なう」として、しくみを残すように求めました。今回の変更は、免税は残しながら、抜け道をふさぐ形になりました。
今日の言葉 ― 「リファンド方式」
「リファンド方式」は、先に税金込みで払ってもらい、条件を満たした人にあとから税金の分を返すやり方のことです。

- 誰が:外国人旅行者が
- 何を:お店で消費税込みの値段を払い
- どうなる:出国のときに税関で品物を見せると、消費税の分が返ってきます
- 今回は:11月1日に買った分から、日本の免税がこのやり方になりました
リファンドは、英語で「返金」という意味です。リファンド方式では、品物を国の外へ持ち出したと確かめられた人だけに、消費税の分が戻ります。
よくある質問
日本に住んでいる私の買い物も変わりますか
変わりません。免税は、外国から来た旅行者が日本で買って国へ持ち帰る品物のためのしくみです。日本に住む人の買い物の値段や払い方は、今までどおりです。
外国人旅行者は損をするのですか
払う消費税は、確認を受ければ最後には返ってきます。ただし、返金の会社が手数料を差し引く場合があり、受け取れる額は店や受け取り方によって変わります。また、日本の中で使ってしまった品物や、持っていない品物の分は返ってきません。
なぜ免税のしくみを変えたのですか
免税で買った品物を日本の中で転売する不正を防ぐためです。2年間で1億円以上を免税で買った人が690人いて、その多くが税関の確認を受けないまま出国していました。
新しいしくみで、仕事が増えるのはどんな会社ですか
旅行者への返金の手続きを受け持つ会社です。返金の額から手数料を差し引くやり方が広がり、空港では日本円の現金で返す窓口も始まりました。
お店には、どんな負担がありますか
返金が終わるまで、消費税の分を立て替える負担です。例では、1日の免税の売上が100万円なら10万円が最長90日ほど置かれたままになります。レジを直す費用もかかります。一方で、持ち出しの確認を税関が行うので、お店の確認の手間は減ります。
百貨店の株は下がったのですか
切り替えの直前の10月30日は、日経平均が2.12%下がった日に、三越伊勢丹ホールディングスやJ.フロントリテイリングの株は上がりました。上がった理由は報道で示されていませんが、「免税が変わるから売られる」という動きにはなっていません。
日本の私たちには、どんな関係がありますか
取りこぼされていた消費税が取りやすくなります。2022年度は、出国のときに取るはずだった22億円のうち21.3億円が取れていませんでした。消費税は国の大事な収入の1つなので、私たちの税金の話でもあります。
おわりに ― 外国人の買い物の払い方が変わり、返金を受け持つ会社に仕事が生まれた
新しい免税制度のニュースから、外国人旅行者の払い方が「出国のとき返金」に変わると、返金を受け持つ会社には仕事が増え、お店には立て替えの負担が残る、というしくみを見ました。
日本に住む私たちの買い物は変わりませんが、取りこぼされていた消費税が取りやすくなります。
株を見ると、免税の売上が大きい百貨店は、切り替えの直前も上がっていました。この先は、百貨店の免税売上と外国人1人あたりの買い物の金額に注目です。そこを毎月見ていけば、新しいしくみで買い物が減ったのかどうかが、数字で見えてくるはずです。
このシリーズでは、世界で起きたことを1つずつ取り上げて、小学生でもわかる言葉で読み解いています。
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