10月15日、日経平均(日本の代表的な225社の株の値段をまとめた数字)が、朝から大きく下がりました。下げはその後も広がり、終わりの値は前の日より3,318円(4.90%)安い64,425.95円でした。
きっかけは、前の日の夜にアメリカで発表された物価(品物やサービスの値段)の数字です。9月のアメリカの物価は、1年前より3.7%上がっていて、予想より高い結果でした。
物価が上がると金利(お金を借りるときのレンタル料)が下がりにくくなり、AIや半導体の会社の株が売られます。その流れが、海をこえて東京に届いたのです。
この記事は「こういうことがありました → 今日はこれを学びましょう」の順で進みます。
こういうことがありました ― アメリカの物価の発表から、日経平均の急な下げまで
10月14日の夜、アメリカの9月の物価が発表され、予想より高い数字でした。その日のアメリカの株が下がり、次の朝、日経平均も大きく下がりました。

時間の順番に並べると、こうなります。
- 10月14日 21時30分(日本時間):アメリカの役所が、9月の物価を発表しました
- 10月15日 5時(日本時間):アメリカの株の取引が終わりました。株の値段をまとめた数字のS&P500は1.11%、ハイテクの会社が多いNASDAQ(ナスダック)は1.88%、半導体の会社の株をまとめた数字は4.30%下がりました
- 10月15日 9時:東京の株の取引が始まり、日経平均は大きく下がって始まりました

日本の新聞は、東京の下げの理由をこう伝えています。前の日のアメリカで物価が予想を上回り、物価と金利が上がることを心配して、AIや半導体の会社の株が売られた、という流れです。
そもそもどこの話? ― アメリカと日本
今回の話は、物価を発表したアメリカと、その動きが届いた日本の2つの国の話です。

地図の色の意味はこうです。
- アメリカ(赤):世界でいちばん大きな経済の国です。首都はワシントンで、物価を発表した役所と、FRB(エフアールビー)があります。FRBはアメリカの中央銀行(国のお金の量や金利を決める、銀行の親分のような役所)です。株の取引の中心はニューヨークです
- 日本(青):私たちの国です。東京で株の取引をしています
アメリカと日本は、海をはさんで時間が13時間ずれています(今の季節)。この時間のずれによって、アメリカの夜のニュースは、日本の朝の株に届きます。
なぜアメリカの物価で株が下がるのか ― 3つのつながり
アメリカの物価が上がると、FRBが金利を上げ続けるかもしれないと考える人が増えます。金利が上がりそうになると、将来のもうけに期待して買われていた株ほど売られます。

1つ目:物価が、予想より上がった
アメリカの9月の消費者物価指数(ふだんの買い物の値段をまとめた数字)は、1年前より3.7%上がりました。前の月とくらべても0.6%上がっていて、8月の0.4%より大きな上がり方でした。
上がった分の半分より多くは、ガソリンの値段によるものでした。ガソリンは、前の月より9.1%も高くなっています。日本経済新聞は、中東の混乱でガソリンや軽油の値段が上がったことが押し上げたと伝えています。
値段の上がり下がりが大きい食べ物とエネルギーを除いた物価(コアと呼びます)も、1年前より2.6%上がりました。アメリカのメディアは、このコアも予想を上回ったと伝えています。
復習:物価が上がると、なぜ金利が上がるのか
物価と金利の関係は、このシリーズの第4回で見た「アクセル」と「ブレーキ」の話です。中央銀行は、景気が冷えたら金利を下げる「アクセル」を踏み、景気が熱くなりすぎて物価がどんどん上がりそうなときに踏むのが、金利を上げる「ブレーキ」です。

金利が上がると、お金を借りにくくなり、買い物や会社の設備に回るお金が減ります。そうして景気の熱を冷まし、物価の上がり方を落ち着かせるのです。つまり、物価が上がりすぎているときほど、中央銀行はブレーキの金利を上げたくなる、ということです。
第4回では、このしくみを、日本の中央銀行である日銀(日本銀行)の金利と、住宅ローン・預金の話で見ました。くわしく知りたい方は、こちらからどうぞ。

2つ目:FRBが、金利を上げ続けるかもしれない
今回のアメリカで、ブレーキを踏む役が FRB です。FRBは、物価の上がり方を1年で2%くらいにすることを目標にしています。9月16日には、政策金利(FRBが決める、お金のレンタル料のもとになる金利)を0.25%上げて、3.75〜4%にしました。
そのときの発表にも「物価の上がり方はまだ高い」という一文がありました。つまりFRBは、9月の時点で、物価はまだ目標の2%まで落ち着いていないと見ていた、ということです。
そこへ、予想より高い物価の数字が出ました。報道では、次の10月27〜28日の会合で、FRBがまた金利を上げるという見方が強まったと伝えています。発表のあと、アメリカの10年の国債(国の借金の証書)の金利は、一時5.27%台まで上がりました。
3つ目:将来のもうけに期待した株ほど、売られた
金利が上がると、将来のもうけに期待して買われている株ほど、値段が下がりやすくなります。証券会社も、金利が上がると「成長株(これから大きくもうけると期待されている会社の株)の株価がより大きく下落しやすい」と説明しています。
つまり、遠い先のもうけに期待して買われている株ほど、金利が上がったときの値下がりが大きくなりやすい、ということです。
AIや半導体の会社は、今のもうけよりも「これからAIでもっともうかる」という期待で株が買われてきました。だから金利の心配が出ると、真っ先に売られやすいのです。10月14日、半導体の会社の株をまとめた数字が4.30%下がったのは、このためです。
同じ日には、AIのコンピューターを貸す会社コアウィーブの社債(会社が借金をするときに出す証書)の値段も急に下がりました。
日本経済新聞は、この会社の借金の大きさ(6月の終わりで約520億ドル)と、利息(借りたお金に払うレンタル料)の支払いが増えていることを理由に挙げています。コアウィーブの株は、15%下がって終わりました。
借金でAIの計算機をそろえる会社は、金利が上がれば、そのまま利息の支払いが増えてしまいます。
「未来のおこづかい券」で考えると
3つ目のつながり(金利が上がると、将来のもうけに期待した株が売られる)を、「未来のおこづかい券」にたとえてみます。

ある友だちが「10年後に1万円もらえる券」を売っています。銀行に預けてもほとんど増えないころは、この券はみんなに人気で、高い値段で売れていました。
ところが、銀行の利息が上がってきました。今、銀行に預けておけば、10年後にはお金がしっかり増えています。すると「10年も待つ券より、銀行に預けたほうがいいかな」と思う人が増え、券の値段は下がっていきます。
たとえの中のものは、本文の話の次のものにあたります。
- 10年後のおこづかい券が、将来のもうけに期待して買われている株(AIや半導体の会社)にあたります(3つ目のつながり)
- 銀行の利息が、金利にあたります(2つ目のつながり)
- 「利息が上がりそう」という知らせが、予想より高い物価の数字にあたります(1つ目のつながり)
日本の私たちには ― 日経平均と、オルカンの中のアメリカ
アメリカで売られた半導体とAIの株の流れは、次の朝、日本の株にも届きました。
日経平均も大きく下がった
10月15日、日経平均は朝から大きく下がって始まり、取引の途中には前の日の終わりの値(67,744.29円)より一時3,600円をこえて安くなりました。
終わりの値は64,425.95円で、前の日より3,318.34円(4.90%)安く、6日続けて下がっています。日本経済新聞は「米利上げ観測が重荷」という見出しで伝えています。
つまり、アメリカで金利がまた上がりそうだという見方が、日本の株を押し下げた、ということです。
日本の株の市場にも、半導体やAIにかかわる大きな会社がたくさんあります。アメリカで半導体の会社の株をまとめた数字が4.30%下がった次の朝に、同じ心配が東京にも届いたのです。
オルカンの中のアメリカとAI
NISAでオルカン(世界中の株にまとめてお金を入れる投資信託「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」)を積み立てている人は、こう思うかもしれません。「アメリカの物価の話が、私のオルカンと何の関係があるの?」
オルカンの9月30日のレポートでは、国ごとの割合はアメリカが63.4%、日本が5.2%でした。会社の種類で見ると、パソコンや半導体などの「情報技術」が32.4%でいちばん多く、1万円のうち約3,240円ぶんにあたります。
残りの約6,760円は、銀行や工場など、そのほかの種類の会社に入っています。
上位10の会社のうち、AIや半導体にかかわる会社はこの6社です。
- エヌビディア:5.0%
- アップル:4.6%
- マイクロソフト:3.4%
- TSMC:1.8%
- ブロードコム:1.5%
- マイクロン:1.1%

オルカンは世界中に分けて入れていますが、中身の3分の1ほどは、金利の心配で売られやすいハイテクの会社です。アメリカの物価の数字は、オルカンの値段にも届く話なのです。
投資の目線で見ると ― 金利が下がりにくいときの追い風・向かい風
金利が下がりにくい、または上がりそうなときは、将来に期待されている会社と借金の多い会社に向かい風、お金を預けて利息を受け取る側に追い風が吹きやすくなります。

- 向かい風:これからのもうけに期待して買われている会社。株の値段が下がりやすくなります
- 向かい風:借金をして大きくお金を使っている会社。利息の支払いが増えます
- 追い風:お金を預けて利息を受け取る側。預金などの利息が増えやすくなります
ただし、今回の話は「次の会合で上げるかもしれない」という見方です。FRBが10月27〜28日に本当に金利を上げるかは、まだ決まっていません。
だから物価のニュースは、「金利が本当に上がったのか、それとも上がりそうという心配で売られたのか」を分けて見ると、読みまちがえにくくなります。
※特定の銘柄(株を売り買いできる1つ1つの会社)をすすめるものではありません。
こうした「お金の守り方」の考え方をまとめた資料は、記事の最後に置いておきました。
今日の言葉 ― 「消費者物価指数」
消費者物価指数は、私たちが買う品物やサービスの値段が、平均でどれだけ変わったかを測る数字です。毎月発表されます。

- 測り方:食べ物・ガソリン・家賃・服など、ふだんの買い物を1つのかごに入れて、そのかごの値段が1年前とくらべてどれだけ変わったかを見ます
- コア:値段の上がり下がりが大きい食べ物とエネルギーを除いた数字です。物価の流れを見るのに使います
- 今回は:アメリカの9月の消費者物価は、1年前より3.7%、コアは2.6%上がりました
予想より高い消費者物価の数字が出たので、FRBが金利を上げ続けるという見方が強まり、AIや半導体の株が売られました。
去年1,000円だった買い物かごが、今年は1,037円になった。これが「3.7%上がった」の意味です。FRBは、これを1,020円くらい(2%)に落ち着かせたいと考えています。
日本でも、総務省が同じような消費者物価指数を毎月出しています。ニュースで「物価」と聞いたら、この買い物かごの値段のことだと思うと、分かりやすくなります。
よくある質問
10月15日、日経平均はどれくらい下がったのですか
10月15日の終わりの値は64,425.95円で、前の日の終わりの値(67,744.29円)より3,318.34円(4.90%)安くなりました。取引の途中には、一時3,600円をこえて下がっています。
前の日の夜にアメリカで物価が発表され、アメリカの株が下がった流れが、そのまま東京の朝に届いた形です。
なぜアメリカの物価で、日本の株が下がるのですか
アメリカの物価が予想より上がると、アメリカの中央銀行FRBが金利を上げ続けるという見方が強まります。金利が上がりそうになると、将来のもうけに期待して買われているAIや半導体の株が売られます。その流れが、次の朝の東京に届きました。
日本の新聞も、前の日のアメリカの物価の数字を下げの理由に挙げていました。
アメリカの9月の物価は、どれくらい上がったのですか
1年前より3.7%上がりました。食べ物とエネルギーを除いたコアは2.6%です。上がった分の半分より多くは、ガソリンの値段(前の月より9.1%高い)によるものでした。
FRBは、本当に金利を上げるのですか
まだ決まっていません。FRBは9月16日に金利を上げたばかりで、次の会合は10月27〜28日です。物価の発表のあと、また上げるという見方が強まったと報じられています。
コアウィーブとは、どんな会社ですか
AIのコンピューターを、ほかの会社に貸しているアメリカの会社です。たくさんの借金をしてコンピューターをそろえていて、10月14日には、この会社の社債(借金の証書)の値段が急に下がり、株も15%下がりました。
オルカンを積み立てています。どう考えればいいですか
オルカンは、アメリカが63.4%、情報技術の会社が32.4%をしめています(9月30日)。金利のニュースで値段が上下しやすい中身だと知っておくと、急に下がった日にもあわてずにすみます。
世界中の株にまとめて入れているので、1日の動きよりも、長い目で積み立てを続けるかどうかを考える材料にするのが大事です。
物価が上がっているのに、なぜ株が下がるのですか
物価が上がると、会社の売上の金額は増えることもあります。ただ、物価が上がりすぎると、FRBは金利を上げて物価を落ち着かせようとします。金利が上がると、お金を借りにくくなり、将来に期待した株の値段も下がりやすくなります。
株の市場は、この「金利が上がりそう」という先の動きを見て動きます。
おわりに ― ニュースは、自分のお金の話です
アメリカの役所が夜に出した物価の数字が、その日のアメリカの株を下げ、次の朝には日本の株と、オルカンの中のAIの会社にも届きました。
第1回・第2回は中東の原油が、第3回はAIのお金が、第4回は金利(お金のレンタル料)が、第5回は韓国の半導体が、自分のお金に届くまでのつながりを見ました。今回見たのは、アメリカの「買い物かごの値段」が、金利を通して日本の株に届くまでです。
このシリーズのテーマは、世界で起きたことを1つずつ取り上げて、小学生でもわかる言葉で「今日はこれを学びましょう」と読み解くことです。
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