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2026.10.24

米国の長期金利が下がったのに、なぜナスダックも下がったのか ― 小学生でもわかる「お金の逃げ場」【メタの決算とエヌビディア】

米国の長期金利が下がったのに、なぜナスダックも下がったのか ― 小学生でもわかる「お金の逃げ場」【メタの決算とエヌビディア】

10月22日(米国時間)、米国の長期金利(10年国債の利回り)が約5.15%から約4.95%へ下がりました。下げ幅は2023年3月以来の大きさです。同じ日に、ハイテク企業の多い株価指数のナスダックは約2.6%下がりました。

「金利が下がると、株は上がりやすい」と聞いたことがある人には、ふしぎな組み合わせです。今回は、順番が逆でした。先に株が売られ、そのお金の行き先で金利が下がったのです。今日は、この1日を順番にほどいていきます。


こういうことがありました ― メタの決算のあと、AIの株が売られた

きっかけは、フェイスブックやインスタグラムを運営する米国の会社メタの決算でした。AIのために使うお金が大きすぎるのでは、という心配が強まり、AIに関わる会社の株がまとめて売られました。

10月22日の流れ。メタの決算、AIの株が売られる、お金が国債へ、金利が下がる

メタは、米国の10月21日(水)の取引が終わったあとに、7月から9月のもうけ(決算)を発表しました。売上は予想を上回りましたが、利益は予想に届きませんでした。報道は、AIのための大きな設備にかけるお金への心配が、また強まったと伝えています。

次の日の10月22日、メタの株は約7%下がりました。心配はメタだけでは終わりませんでした。

  • エヌビディア(AIを動かす半導体を作る会社):約4.4%下がりました
  • コアウィーブ(AI用の計算の設備を、ほかの会社に貸す会社):約10%下がりました。借金が多いことへの心配も重なりました

株価指数で見ると、ちがいがはっきりします。株価指数とは、たくさんの会社の株の値段をまとめて、市場全体の調子を1つの数字にしたものです。

ナスダック(米国のナスダック市場に上場する数千社の株をまとめた指数で、アップルやマイクロソフト、エヌビディアなどハイテク企業の割合が大きいもの)は約2.6%下がりました。米国の大きな会社500社をまとめたS&P500は約1.2%の下げ。

昔からある大きな会社30社でつくるダウは、ほぼ動きませんでした。

10月22日の1日の動き。コアウィーブ約10%、メタ約7%、エヌビディア約4.4%の下げ。ナスダック約2.6%、S&P500約1.2%、ダウはほぼ横ばい

AIにお金を使う会社ほど大きく下がり、AIとのつながりが小さい会社はあまり動かなかった。これが、この日の株の動きです。


エヌビディアは、なぜいつも話題になるのか

エヌビディアは、AIを動かすための半導体(チップ)を作る会社です。世界でいちばん「会社全体の値段」が高い会社でもあります。だから、AIへのお金の流れが変わると、まっ先に名前が出てきます。

エヌビディアは、AIの工場に置く「計算のエンジン」を作る会社。AIにかけるお金が増えると、エンジンの注文も増える

エヌビディアは、1999年にGPU(画像を処理する半導体)を発明した、と自分たちで説明している会社です。GPUは、たくさんの計算を同時にこなすのが得意な部品。その力が、AIを動かすのにぴったりだったのです。

いまは、AIのためのチップやしくみ、ソフトまでまとめて手がけています。

AIを作る会社は、計算のための大きな設備をそろえます。その中に入るのが、エヌビディアのチップです。つまり、メタのような会社がAIにかけるお金は、その一部がエヌビディアの売上になる、ということです。

だから「AIにお金をかけすぎでは」という心配が出ると、お金を使う側のメタだけでなく、受け取る側のエヌビディアも売られやすくなります。

エヌビディアの時価総額(会社全体の値段)は、10月22日の終値で約5.1兆ドル、日本円で約800兆円。世界1位で、2位のアップルをわずかに上回る大きさです。

復習:会社全体の値段「時価総額」

第3回では、時価総額は、その会社の株を全部買ったらいくらになるかを表す「会社全体の値段」(株の値段×株の数)だ、という話を見ました。

時価総額は、株の値段×株の数で表す、会社全体の値段

時価総額が大きい会社ほど、株価指数の中で占める割合も大きくなります。エヌビディアの株が4%下がると、ナスダックやS&P500の数字を大きく引き下げるのは、このためです。くわしく知りたい方は、こちらからどうぞ。

前の回の記事

なぜ金利が下がったのか ― 株から逃げたお金が、国債へ向かった

株を売った人たちのお金は、米国の国債(国がお金を借りるときに出す借用書)に向かいました。国債を買う人が増えると国債の値段が上がり、利回り(もらえる利息の割合)は下がります。これが、金利が下がったしくみです。

不安なとき、お金は株から国債へ逃げる。国債が買われると、利回りが下がる

不安が強まったとき、お金はより安全で、いつでも売り買いしやすいものへ移ります。株を売って、国債や金を買う、という動きです。これを質への逃避といいます。

米国の国債は、米国という国が返してくれる借用書なので、世界でいちばん安全なものの1つと考えられています。

報道も、この日は「AIにかけるお金と、そのお金を借りる費用への心配がまた出て、投資家が国債に集まり、利回りが下がった」と伝えています。つまり、AIの株への心配から逃げたお金が国債に流れこんだ、ということです。

10月22日、米国の長期金利は約5.15%から約4.95%へ、ナスダックは約2.6%下がった

金利(お金を借りるときの値段)の下げ幅は、1日で約0.19ポイント。2023年3月以来、約3年7か月ぶりの大きさでした。

復習:借用書の値段と利回りはシーソー

第10回では、国債のような借用書の値段と利回りは、シーソーのように反対に動く、という話を見ました。

借用書の値段が下がると利回りが上がり、値段が上がると利回りは下がる。シーソーのように反対に動く

今回は、そのシーソーの反対側が動きました。国債が買われて値段が上がったので、利回りは下がったのです。ニュースで「国債が買われた」と「金利が下がった」が同じ意味で使われるのは、このためです。くわしく知りたい方は、こちらからどうぞ。

前の回の記事

原油は上がっていたのに

同じ日、原油の値段は、サウジアラビアへの攻撃を受けて約4%上がっていました。原油が上がると、ものの値段が上がる心配が強まり、ふつうは金利が上がりやすくなります。報道によると、原油高よりもAIへの心配のほうが強く、米国の長期金利は下がりました。


「金利が下がると株は上がる」は、どこへ行ったのか

「金利が下がると株は上がりやすい」は、金利が先に動いたときの話です。今回は株が先に動き、金利はその結果として下がりました。どちらが先に動いたかで、同じ「金利が下がった」でも意味が変わります。

復習:金利と、将来に期待した株

第6回では、金利が上がると、将来のもうけに期待して買われている株ほど値下がりしやすい、という話を「10年後にもらえるおこづかい券」で見ました。

銀行の利息が上がると、10年後にもらえるおこづかい券の人気が下がる。将来に期待した株も同じ

銀行の利息が上がれば、10年後のおこづかい券を待つより、銀行に預けたほうがよくなります。逆に利息が下がれば、おこづかい券の人気は戻ります。ハイテクの株は、このおこづかい券に近い株です。だから「金利が下がると株は上がりやすい」と言われます。

くわしく知りたい方は、こちらからどうぞ。

前の回の記事

ところが今回は、利息が下がる前に、「そのおこづかい券は本当にもらえるのか」という心配が先に出ました。AIにかけた大きなお金が、将来ちゃんともうけになって返ってくるのか、という心配です。

お祭りの雨で考えると

上の説明(株が先に売られ、逃げたお金で国債が買われ、金利があとから下がった順番)を、お祭りの夕立にたとえてみます。

お祭りに夕立。屋台からお客さんが減り、テントの下に人が集まる。テントの席の取り合いになる

お祭りの屋台が、にぎわっていました。そこに急に夕立が来ます。お客さんは屋台の前から離れて、雨をしのげる大きなテントの下に集まります。テントの下の席は取り合いになります。

ふだんなら「テントの席が空いて、居心地が悪くなると、お客さんは屋台に戻る」という流れもあります。でも夕立の日は、雨が先に降って、お客さんがテントに逃げたのです。テントが混んだのは、雨が降った結果です。

たとえの中のものが、ニュースの何にあたるかを並べると、こうなります。

  • 夕立が、AIにお金をかけすぎでは、という心配にあたります
  • 屋台が、AIに関わる会社の株にあたります
  • 大きなテントが、米国の国債にあたります
  • テントの席の取り合いが、国債が買われて、利回りが下がったことにあたります

日本の私たちには ― 23日の東京で、AIの株が売られ、円高に

米国の22日のナスダック安と長期金利の低下は、日本の23日に届きました。東京では、AIや半導体の会社の株が売られ、円高(ドルに比べて円の値打ちが上がること)が進みました。

日経平均の終値。22日の下げは米国の22日の取引より前。米国の動きが届いたのは23日

日本と米国には時差があります。米国の22日の取引は、日本時間では22日の夜から23日の朝にあたります。

実は、日経平均(日本を代表する225社の株の値段をまとめた数字)は、その前の22日にも、64,621円から62,907円へ約2.65%下がっていました。

これは、前の日に上がった分を売って、もうけを確定させる動き(利益確定)や、米国の半導体の会社の決算のあとの下げを受けたもので、米国の22日の取引より前の話です。

米国の動きを受けた23日、日経平均は62,693円で終わりました。前の日から約214円の下げです。朝のうちは一時1,400円を超えて下がりましたが、午後に下げ幅は小さくなりました。

売られたのは、東京エレクトロンやソフトバンクグループなどのAI・半導体の株でした。

円の値段(日本銀行が夕方5時に出す数字)は、22日の1ドル=157円22銭ほどから、23日は156円95銭ほどへ。23日は一時156円08銭まで円高になり、約1か月ぶりの円高でした。

報道は、AIの株が売られて不安が強まり、安全とされる円が買われたこと、米国の金利が下がったことも円を支えたと伝えています。

同じ日でも、上がる株と下がる株があった

23日の東京では、AIや半導体の会社の株が売られた一方で、上がった株もありました。同じ米国の長期金利のニュースでも、会社によって受け止め方は反対になります。

上がったのは、米国で家を売る事業に力を入れている住宅の会社の株です。報道は、米国の長期金利が5%を下回り、米国の住宅の事業の先行きへの心配がやわらいだためと伝えています。金利が下がると、家を買う人がお金を借りやすくなるからです。

反対に、銀行の株は下がりました。金利が下がると、銀行は貸したお金から得る利息が減りやすくなります。業種ごとに見ると、23日にいちばん大きく下がったのは銀行でした。

株価指数の数字だけを見ていると、こうしたちがいは見えません。1つ1つの会社が、ニュースのどこで得をして、どこで困るのか。そこまで考えると、同じ1日がまったくちがって見えてきます。

同じ23日、メタのAIが日本にやってきた

メタの株が売られたあとの23日(日本時間)、メタはAIエージェント「Muse」の日本での提供を始めました。北米のほかでは、日本が初めてです。

Museは、メールを送る、旅行を予約する、買い物をするといった用事を、本人の代わりに進めるAIです。送信や購入の前には、本人に確認します。多くの機能は無料で、もっと使いたい人向けに有料のプランもあります。

日本では、フリマアプリのメルカリ、家計簿のマネーフォワード ME、チケットぴあと連携する予定です。23日、メルカリの株は3,451円から3,704円へ、約7.3%上がりました。上がった理由として報道が挙げたのは、Museとの連携です。

AIにお金を使うメタは「かけすぎでは」と心配されて売られ、そのAIとつながる日本の会社は期待されて買われました。同じAIの話でも、立場によって株の動きは反対になります。


投資の目線で見ると ― AIにお金を使う会社に向かい風、金利が下がると助かる会社に追い風

AIにかけるお金への心配が続くあいだは、AIに大きなお金を使う会社と、そのお金を受け取る会社の株に向かい風になりやすい。一方で、長期金利が下がると借りやすくなる業種には追い風になりやすい。これが、今回の1日から見える流れです。

AIにお金を使う会社とAIの部品の会社には向かい風、住宅の会社には追い風、銀行には向かい風
  • 向かい風になりやすい:AIのために大きな設備のお金を使う会社。かけたお金が、もうけになって返ってくるかを見られます
  • 向かい風になりやすい:借金をしてAIの設備を増やしている会社。お金を借りる費用への心配が出やすいからです
  • 向かい風になりやすい:AIの半導体や、それを作る機械の会社。お金を使う側の勢いが落ちると、注文に響くからです
  • 追い風になりやすい:住宅の会社。金利が下がると、家を買う人がお金を借りやすくなります
  • 向かい風になりやすい:銀行。金利が下がると、貸したお金から得る利息が減りやすくなります

見どころは、来週に続く予定です。10月27〜28日にFRB(アメリカの中央銀行。中央銀行とは、国のお金の量や金利を調整する銀行のこと)の会合があります。

28日にアルファベット(グーグルの会社)とマイクロソフト、29日にアマゾンの決算、29〜30日に日銀(日本の中央銀行)の会合と続きます。AIにお金を使う大きな会社が、決算で何を話すかに、市場の目が集まります。

※特定の銘柄(株を売り買いできる1つ1つの会社)をすすめるものではありません。こうした「お金の守り方」の考え方をまとめた資料は、記事の最後に置いておきました。


今日の言葉 ― 「質への逃避」

「質への逃避」は、不安が強まったとき、お金を、より安全で売り買いしやすいものへ移すことです。株を売って国債や金を買う、などの動きをさします。英語では「フライト・トゥ・クオリティ」といいます。

今日の言葉 質への逃避。不安が強まると、お金は株から、より安全な国債や金へ移る
  • 誰が:株にお金を入れていた投資家が
  • 何を:AIに関わる会社の株を売って
  • どうする:そのお金で、より安全な米国の国債や円を買います
  • 今回は:国債が買われて米国の長期金利が下がり、東京では円が買われて円高になりました

質への逃避が起きると、株が下がるのと同時に、国債の利回りが下がり、円高になりやすい。3つが同じ日にそろって動いたら、「お金が逃げているのかもしれない」と考えると、ニュースが読みやすくなります。


よくある質問

金利が下がったのに、なぜ株も下がったのですか

株が先に売られたからです。AIにかけるお金への心配で株を売った人たちが、そのお金で国債を買いました。国債が買われると利回りは下がります。金利の低下は、株を売ったお金の行き先の結果でした。

ナスダックとは何ですか

米国のナスダック市場に上場する数千社の株をまとめた株価指数です。アップル、マイクロソフト、エヌビディアなど、ハイテク企業の割合が大きいのが特徴です。

エヌビディアは、なぜいつもニュースになるのですか

AIを動かす半導体を作る会社で、時価総額が世界1位だからです。AIにかけるお金が増えるか減るかで売上が変わりやすく、株価指数の中で占める割合も大きいので、市場全体の数字を動かします。

なぜメタの決算で、ほかの会社の株まで下がったのですか

メタのAIへのお金の使い方が、AIの設備を売る会社や貸す会社の売上につながっているからです。メタが使うお金が重すぎるのでは、という心配は、そのお金を受け取る側の会社への心配にもなります。

米国の国債が「安全」と言われるのは、なぜですか

米国という国が返してくれる借用書だからです。世界でいちばん多く売り買いされていて、いつでもお金に換えやすいことも理由です。

日本では、何が起きましたか

23日の東京で、AIや半導体の会社の株が売られ、日経平均は約214円下がりました。円は一時1ドル=156円08銭まで円高になりました。住宅の会社の株は上がり、銀行の株は下がりました。

メタのAIエージェント「Muse」と連携する予定のメルカリの株は、約7.3%上がりました。

これから、何を見ればよいですか

来週のアルファベット、マイクロソフト、アマゾンの決算です。AIにお金を使う大きな会社が、使うお金とそのもうけについて何を話すかで、AIの株への心配が強まるか弱まるかが変わります。


おわりに ― メタの決算から始まった動きが、次の日の東京にも届いた

米国の長期金利が下がったのに、ナスダックも下がった1日を見てきました。「金利が下がると株は上がる」は、金利が先に動いたときの話です。今回は、AIへの心配で株が先に売られ、逃げたお金が国債に向かった結果、金利が下がりました。

ニュースで2つの数字が同時に動いたときは、どちらが先に動いたのかを見ると、意味がわかりやすくなります。前の回では、EVの補助金が下がる話を見ました。今回は、遠い米国の1つの会社の決算が、次の日の東京の株と円にまで届く様子を見ました。

このシリーズのテーマは、世界で起きたことを1つずつ取り上げて、小学生でもわかる言葉で読み解くことです。

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筆者:株式会社スターストリーム・スタジオ 代表 清水 昴

タグ

#小学生でもわかる #資産形成
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