経済産業省(車や工場、エネルギーなどを受け持つ国の役所)は10月21日、EV(電気で走る車)を買う人への国の補助金を、2027年1月から下げると発表しました。EVの補助金の最大の額は、130万円から78万円へ。今の約6割です。今年の1月に90万円から130万円へ上げたばかりの補助金が、1年で下がることになります。
なぜ国は、上げたばかりの補助金を下げるのでしょうか。そして、下がるかどうかを決めるのは「買った日」ではなく「登録した日」です。今日は、この発表を1つずつほどいて、車を買う人と、自動車の会社に何が起きるのかを見ていきます。
こういうことがありました ― EVの補助金が、2027年1月から下がる
国のEVの補助金(CEV補助金)は、2027年1月1日以降に新車として登録する車から、今の約6割に下がります。軽自動車のEVは約8割です。

補助金とは、国が、車の値段の一部を代わりに払ってくれるしくみです。たとえば400万円のEVに100万円の補助金が出れば、買う人が払うのは実質300万円になります。国がEVを広めたいので、高いEVを買いやすくするために出しているお金です。
経済産業省が発表した、見直し後の最大の額(車の種類ごとの上限)はこうなっています。
- EV:130万円 → 78万円
- 軽自動車のEV:58万円 → 45.8万円
- PHEV(電気でもガソリンでも走れる車):85万円 → 51万円
- FCV(水素で電気をつくって走る車):150万円 → 90万円
この最大の額には、鉄を作るときに出る二酸化炭素を減らす取り組みなどを評価して上乗せする分(GX加算)が入っています。上乗せを除いた基本の額で見ると、EVは125万円から75万円です。

ここで気をつけたいのは、補助金の上限は「最大」の額で、どの車にも同じ額が出るわけではないことです。補助金の額は、車の性能や、車を作る会社の取り組み(充電の場所を増やす、修理の体制を整える、など)を国が点数にして、車の種類ごとに決めます。
最大の額が出るのは、点数がいちばん高い車だけです。たとえばEVで点数が真ん中くらいの車は、基本の額が65万円から39万円に下がります。
なぜ下げるのか ― 申し込みが多くて、予算が早く尽きそうだから
下げる理由は、EVが思ったより売れて、補助金に使えるお金(予算)が早くなくなりそうだからです。国は、1台あたりの額を小さくして、今あるお金でできるだけ長く補助を続けようとしています。
この補助金のお金は、国が2025年度の補正予算(年度の途中で追加で決める国の予算)で用意した、約1,100億円です。
経済産業省の発表には、「足元の申請状況を踏まえ」、申し込みの受付の最終期限(2027年2月12日)よりも早く予算が終わる見込みだと書かれています。
日本経済新聞は「EVの販売が好調に推移するなか」と伝え、日刊自動車新聞は、外国のEVや国産のEVがよく売れて、補助金が12月中にも終わる見通しだと伝えました。つまり、補助金を目当てにEVを買う人が予想より多く、お金の減り方が速かった、ということです。
今の額での受付は、12月上旬から下旬に終わる見込みとされています。予算がなくなれば、そこで受付は止まります。
1年で、上げて、下げる
EVの補助金の最大の額は、この1年で大きく動きました。

- 2025年12月:国が、2026年1月からEVの補助金を40万円増やして、最大130万円にすると決めました(それまでは最大90万円)
- 2026年1月から:最大130万円
- 2026年10月21日:2027年1月から最大78万円に下げると発表
上げたことで、EVを買う人が増えた。買う人が増えたので、お金が早く減った。今回の見直しは、その流れの続きです。
「続ける場合は」という書き方
経済産業省の発表は、「本事業が令和9年(2027年)1月以降も継続する場合において」、額をこう見直す、という書き方です。1月以降に補助金がどう続くのか、もうどこまで決まっているのかは、発表の中には書かれていません。
「来年も必ずもらえる」とは、まだ言えない、ということです。
かき氷の割引券で考える ― なぜ「1枚あたり」を小さくするのか
国が1台あたりの額を下げる理由を、お祭りのかき氷の割引券にたとえてみます。

町内会のお祭りで、かき氷の割引券を配ることにしました。町内会は、割引のためのお金を1つの箱に入れて用意しています。最初の割引は、1枚300円引き。
ところが、思ったよりたくさんの人が来ました。このままだと、夕方になる前に箱のお金がなくなってしまいます。そこで町内会は、夕方からは1枚180円引きにして、最後に来た人まで配れるようにすることにしました。
そして、どちらの割引になるかは、券をもらった時刻ではなく、かき氷を受け取った時刻で決まります。昼に列に並んでいても、受け取るのが夕方になれば、180円引きです。
たとえの中のものが、ニュースの何にあたるかを並べると、こうなります。
- 町内会が、国(経済産業省)にあたります
- 割引のためのお金が入った箱が、約1,100億円の予算にあたります
- 1枚あたりの割引が、1台あたりの補助金の額にあたります
- 夕方が、2027年1月にあたります
- かき氷を受け取った時刻が、車を登録した日にあたります
日本の私たちには ― 年内に「登録」が間に合うかで、数十万円変わる
EVをこれから買う人にとって大事なのは、2026年12月31日までに車の登録が終わるかどうかです。決め手は、買う約束をした日(契約日)でも、車が届いた日(納車日)でもなく、新車として登録した日です。

車を買うと、お店が国に「この車をこの人が使います」と届け出ます。これが登録です。登録の日が2026年のうちなら今の額、2027年に入ると見直し後の額になります。最大の額が出る車なら、130万円と78万円で、52万円の差です。
報道によると、発表のあと、販売店には「納車は年内に間に合うか」という問い合わせが増えています。気をつけたいのは、次の2つです。
- 年内に登録しても、予算が先に尽きると申し込めないことがある:今の額の受付は、12月上旬から下旬に終わる見込みです
- 届くまでに時間がかかる車は、年内の登録がむずかしいことがある
これからEVを考えている人は、お店で「登録はいつになりそうか」と「その車の補助金はいくらか」の2つを確かめておくと、あとであわてずにすみます。
世界でも、EVへの手助けは国によってばらばら
EVへの手助けは、国によって向きがちがいます。

- アメリカ:EVを買う人の税金を最大7,500ドル軽くするしくみを、2025年9月30日に終えました
- ドイツ:2026年1月19日に、個人がEVを買うときの補助を新しく始めると発表しました。額は1,500ユーロから6,000ユーロです
- 日本:2027年1月から、補助の額を下げます
日本では、2025年に売れたEVは6万677台で、乗用車全体の1.6%でした。EVはまだ少ない一方で、補助金を上げたらお金が早く減るほど売れた。今回の見直しは、この2つが同時に表れた出来事です。
投資の目線で見ると ― 年内は追い風、来年は向かい風
車の会社にとっては、2026年のうちは「今のうちに買おう」という人が増える追い風、2027年に入ると、その反動で売れにくくなる向かい風になりやすい。これが、今回の発表から見える流れです。

- 追い風になりやすい:年内に登録できるEVを持つ会社。今のうちに買おうとする駆け込み需要が見込めます
- 向かい風になりやすい:売る車の中でEVの割合が大きい会社。2027年に入ると、同じ車でも買う人の負担が増えます
- 風を受けにくい:ハイブリッド車(ガソリンと電気の両方を使う車)が中心の会社。この補助金とのつながりが小さいからです
- 気をつけたい:EVの電池や部品を作る会社。EVの売れ方が変わると、注文の数にも響きます
発表の翌日(10月22日)、日本の大手の自動車会社の株の値段は、前の日から0.5%以内の動きで、ほぼ変わりませんでした。補助金の見直しで株が大きく動いた、という報道も見当たりません。見どころは、発表の日の値動きより、年明けにEVの売れ方がどう変わるかの方にあります。
※特定の銘柄(株を売り買いできる1つ1つの会社)をすすめるものではありません。こうした「お金の守り方」の考え方をまとめた資料は、記事の最後に置いておきました。
今日の言葉 ― 「駆け込み需要」
「駆け込み需要」は、値上がりや制度の変更の前に、「今のうちに」と買う人が一時的に増えることです。駅で電車のドアが閉まる前に駆け込むように、期限の前に買いが集まる、という意味です。

- 誰が:EVを買おうと考えている人が
- 何を:EVを
- どうする:補助金が下がる前の2026年のうちに登録しようと、早めに買います
- 今回は:発表のあと、販売店に「納車は年内に間に合うか」という問い合わせが増えています
駆け込みで先に買った分だけ、あとで買う人は減ります。これを「反動減」と呼びます。2026年の年末にEVが売れても、2027年の年明けに売れ方が落ちることは、はじめから考えに入れておくと、ニュースにふり回されずにすみます。
よくある質問
EVの補助金は、いつから下がるのですか
2027年1月1日以降に、新車として登録する車からです。2026年12月31日までに登録した車は、今の額のままです。
いくら下がるのですか
EVの最大の額は、130万円から78万円になります。今の約6割です。軽自動車のEVは58万円から45.8万円で、約8割です。
買う約束をした日が年内なら、今の額でもらえますか
いいえ、決め手は登録した日です。契約が年内でも、登録が2027年になると、見直し後の額になります。
なぜ、上げたばかりの補助金を下げるのですか
EVがよく売れて、補助金に使える約1,100億円の予算が、受付の最終期限より早くなくなりそうだからです。1台あたりの額を下げて、今あるお金でできるだけ長く続けるためです。
年内に登録すれば、必ずもらえますか
必ずとは言えません。今の額の受付は、予算がなくなりしだい止まり、12月上旬から下旬に終わる見込みとされています。お店で、登録の時期と補助金の申し込みの時期を確かめておくと安心です。
どの車も78万円もらえるのですか
いいえ、78万円は最大の額です。補助金の額は、車の性能や作る会社の取り組みを国が点数にして、車の種類ごとに決めます。最大の額が出るのは、点数がいちばん高い車だけ。
自動車の会社の株は、どうなりましたか
発表の翌日、日本の大手の自動車会社の株は、ほぼ動きませんでした。年内は駆け込みで売れやすく、年明けは反動で売れにくくなりやすいので、EVの売れ方の数字が出てくる年明けが、見どころになります。
おわりに ― ニュースは、自分のお金の話です
EVの補助金が2027年1月から約6割に下がる理由と、「登録した日」で額が決まる話を見てきました。国の補助金は、予算という1つの箱から出ています。たくさんの人が使えば、箱のお金は早く減り、1人あたりの額を小さくするしかなくなります。
前の回では、高市政権の1年で株とお金がどう動いたかを見ました。今回は、国のお金の使い方が、私たちの買い物と会社のもうけにどう届くかを見ました。
このシリーズのテーマは、世界で起きたことを1つずつ取り上げて、小学生でもわかる言葉で読み解くことです。
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