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2026.10.20

フランスの暴動と、国の借金の金利 ― 小学生でもわかる「国債」のしくみ【夜間外出禁止が出た日に起きたこと】

フランスの暴動と、国の借金の金利 ― 小学生でもわかる「国債」のしくみ【夜間外出禁止が出た日に起きたこと】

10月19日、フランスの首相が、暴動の起きた一部の町に夜間の外出禁止を出すよう指示しました。

同じ日、フランスの国債(国がお金を借りるときに出す借用書)の金利(借りたお金にのせて払う利息の割合。利息は、借りたお礼に上乗せして払うお金です)は、1日で0.15%上がって4.94%になりました。1日の上げ幅としては、2025年3月以来の大きさです。

週末のあいだに、パリやリヨン、マルセイユなどで、店のガラスが割られ、品物が持ち去られました。治安のニュースに見えますが、お金の世界では「この国にお金を貸して大丈夫か」という話としても受け止められています。

今日は、このニュースから国債の金利が、国の信用の「ものさし」になっているしくみを見ていきます。投資をしてみたい人が、ニュースを見るときの手がかりになる話です。


こういうことがありました ― 高校生の抗議が、全国の暴動に広がった

始まりは、約4週間前に高校生が「学校の設備が足りない」と訴えた抗議でした。そこに物価の上がり方への不満が重なってデモが大きくなり、10月17日(土)の全国デモの日に、暴力と略奪が一気に広がりました。

フランスの株(CAC40)の1か月。10月19日に下がった

時間の順番に並べると、こうなります。

  • 9月の中ごろ:高校生が、教室の設備や先生が足りないことに抗議し始めました。やがて、物価の上がり方への抗議にも広がりました
  • 10月1日:首相が、2027年の国の予算の案を出しました。約540億ユーロを節約する、きびしい中身です。フランスの政府は議会で半分の議席を持っていない少数与党で、予算はまだ議会と話し合っている途中です
  • 10月17日(土):全国でデモがあり、その日から暴力と略奪が広がりました。18日(日)の夜まで続きました
  • 10月18日(日):内務大臣(警察をまとめる大臣)が辞表を出しましたが、マクロン大統領は受け取りませんでした
  • 10月19日(月):首相が、ごく限られた地域だけの夜間外出禁止を指示しました。パリでは、レピュブリック広場のまわりなどで、夜23時から朝6時までの外出が禁止されました
  • 10月19日(月):フランスの国債の金利は、前の取引日の約4.79%から4.94%へ上がりました。フランスの株をまとめた数字(CAC40)も、10月16日の7,956.70から7,868.05へ、1.11%下がりました

逮捕された人は約2,400人(内務省の数字として報道されたもの)、けがをした警察官と消防士は約1,000人、被害を受けた店は約3,000にのぼります。亡くなった人はいません。

ここで1つ、気をつけておきたいことがあります。報道は「暴動が広がった日に、国債の金利が上がった」と並べて書いています。「暴動だけが原因で金利が上がった」とは書いていません。くわしくは、次の「なぜ」で見ていきます。


そもそもどこ? ― ヨーロッパのフランスと、共通のお金ユーロ

フランスは、ヨーロッパの西側にある国です。首都のパリは、日本でいう東京にあたる町です。

フランスと日本の位置

地図の色の意味はこうです。

  • フランス(赤):ヨーロッパの西側の国です。大統領(いまはマクロン大統領)と、政府をまとめる首相がいます
  • 日本(青):私たちの国です

フランスで使われているお金はユーロです。ユーロは、ヨーロッパの21の国が一緒に使っている共通のお金です。ユーロを使う国のお金の量や金利のもとを決めているのが、ヨーロッパ中央銀行(ECB)です。

日本でいえば、日本銀行(日本のお金の量や金利のもとを決めている、日本の中央銀行)にあたります。


なぜ金利が上がったのか ― 国の借用書を手放す人が増えた

国債は、国がお金を借りるときに出す借用書です。「この国はきちんと返せるだろうか」と心配する人が増えると、借用書を手放す人が増え、国がお金を借りるときの金利が上がります。

政治が荒れる→国債を手放す人が増える→国が借りる金利が上がる→会社の借金・株・ユーロに届く

つながりを順番に並べると、次のとおりです。

  • 1つ目のつながり:もともと、国の借金が大きくなっていた。フランスの国の借金は、2026年6月末で約3兆5,955億ユーロです。国が1年間に生み出すもうけの合計(GDP)の119.0%にあたります。10月のはじめにも、借金と予算の先行きへの不安から国債が売られ、金利は一時5%を超えました。2002年7月以来の高さです
  • 2つ目のつながり:政治が荒れると、予算を通せるかが心配になる。政府は議会で半分の議席を持っておらず、節約の予算はまだ通っていません。そこへ暴動が重なり、内務大臣が辞表を出すほど政治がゆれました。お金を貸す側から見ると、「借金を減らす計画が、本当に進むのか」が見えにくくなります
  • 3つ目のつながり:国債を手放す人が増え、金利が上がった。10月19日、フランスの国債の金利は1日で0.15%上がりました。同じユーロを使うドイツとくらべると、10月のはじめの時点で、フランスは1.5%以上高い金利でないとお金を借りられなくなっていました。2011年の終わり以来の差の大きさです

ヨーロッパ中央銀行のラガルド総裁は、10月15日に「第一の解決策は国内、つまり財政政策にある」と述べています。つまり、「中央銀行が助けに入るのではなく、フランスが自分で借金の計画を立て直すことが先だ」ということです。

借用書の値段と金利は、シーソーの関係

国債の値段が下がると、あとから買う人がもらえる利息の割合(利回り)は上がります。ニュースで「国債が売られた」と「金利が上がった」が同じ意味で使われるのは、このためです。

国債の値段が下がると、利回りが上がるシーソーの関係

たとえば、100円で買うと毎年5円の利息がもらえる借用書があるとします。この借用書を手放したい人が増えて、95円で売られるようになりました。すると、95円で買った人は、毎年5円をもらえるので、利息の割合は約5.3%になります。

つまり、借用書の値段が下がるほど、新しく買う人にとっての利回りは上がる、ということです。そして国が次にお金を借りるときは、この利回りに合わせた高い金利を払わないと、貸してくれる人が集まりません。

国債の金利を、友だちにお金を貸す話にたとえると

上の説明(返してもらえるか心配になると、借用書が手放されて、国が借りるときの金利が上がる)を、友だちにお金を貸す話にたとえてみます。

家の中がもめている友だちには、高い利息でないとお金を貸したくない

クラスに、いつもお金を借りに来る友だちがいます。これまでは、少しの利息をつければ、みんな気持ちよく貸していました。ところが最近、その友だちの家の中で言い争いが続いていて、「おこづかいの使い方を見直す」という家族の約束も、まだ決まっていません。

みんなは、「本当に返してもらえるのかな」と心配になります。前に書いてもらった借用書を、安くてもいいから別の人にゆずりたい、と思う人も出てきます。次に貸すときは「もっと利息をつけてくれないと貸さない」と言うようになります。

たとえの中のものと、本文の話の対応は次のとおりです。

  • いつもお金を借りに来る友だちが、国債を出してお金を借りているフランスの国にあたります
  • 家の中の言い争いが、暴動と、ゆれている政治にあたります
  • まだ決まっていない「おこづかいの見直し」の約束が、議会でまだ通っていない節約の予算にあたります
  • 借用書を安くてもゆずりたい人が出ることが、国債が売られて値段が下がることにあたります
  • 「もっと利息をつけて」と言われることが、国がお金を借りるときの金利が上がることにあたります

復習:会社の借用書「社債」も、同じしくみでした

第8回では、会社がお金を借りるときに出す借用書「社債」を見ました。返せるか心配する人が増えると安く売られて、利回りが上がる、という話です。

社債は会社の借用書。心配する人が増えると安く売られ、利回りが上がる

国債は、その「国」版です。借りる人が会社なら社債、国なら国債と呼びます。どちらも、返してもらえるかどうかの心配が大きくなるほど、金利が上がるしくみは同じです。くわしく知りたい方は、こちらからどうぞ。

前の回の記事

日本の私たちには ― 金利は「お金を貸すときの値段」

国債の金利は、その国の会社や家庭がお金を借りるときの金利のもとになります。フランスの国債の金利が上がれば、フランスの会社がお金を借りるときの負担も重くなりやすくなります。

日本の私たちにとって、このニュースは「遠い国の治安の話」だけではありません。2つの見方ができます。

1つ目は、国債の金利は、国の信用の通信簿になるということです。政治や借金の計画がゆれると、その国の国債の金利が上がり、その国の株やお金にも届きます。今回も、国債の金利が上がった日に、フランスの株をまとめた数字(CAC40)は1.11%下がりました。

2つ目は、日本でも、国にお金を貸すときの値段(金利)が上がってきているということです。財務省が売り出している個人向け国債(個人が買える国債)の「固定5年」は、10月に募集している分(第187回)の金利が年2.39%です。

10年の国債の金利は、10月19日に2.935%でした。1年前の2025年10月1日は1.663%だったので、1年で1%以上上がっています。

日本の10年の国債の金利は、1年で約1.7%から約2.9%へ上がった

日本とフランスの金利は、理由も動き方もちがいます。ただ、どちらも「その国にお金を貸すと、いくらの利息がつくか」を表す同じものさしです。

ニュースで国債の金利を見かけたら、「この国にお金を貸す人が、どれくらい安心しているか」を表す数字だと考えると、話がつながって見えてきます。


投資の目線で見ると ― 国債の金利が上がるときの追い風・向かい風

ある国の国債の金利が上がると、その国でお金を借りて事業をしている会社には向かい風が吹きやすくなります。反対に、これから国債を買う人にとっては、もらえる利息が増えるという面もあります。

国債の金利が上がると、借金の多い会社に向かい風、新しく国債を買う人には利息が増える
  • 向かい風:その国で、借金をして事業を広げている会社の株。借りるときの金利が上がり、もうけが減りやすくなるからです
  • 向かい風:その国のお金(今回ならユーロ)。政治の不安が長引くと、その国から外にお金を移す人が増えやすくなります
  • 追い風になりやすい:これから国債を買う人。金利が上がったあとに買えば、もらえる利息が増えます。ただし、すでに持っている国債の値段は下がります

ただし、国債の金利は、政治のニュース1つで決まるものではありません。「何が原因と報道されているか」と「その前から何が心配されていたか」を分けて確かめると、1日のニュースにあわてて動かずにすみます。フランスでは、議会で予算が通るかどうかが、次の見どころです。

※特定の銘柄(株を売り買いできる1つ1つの会社)をすすめるものではありません。

こうした「お金の守り方」の考え方をまとめた資料は、記事の最後に置いておきました。


今日の言葉 ― 「国債」

国債は、国がお金を借りるときに出す借用書です。買った人は国にお金を貸したことになり、決まった日に利息と、最後に元のお金を受け取ります。

今日の言葉 国債。国がお金を借りるときの借用書。返せるか心配されると金利が上がる
  • 誰が出す:国です。日本なら財務省が出しています
  • 誰が買う:銀行・保険会社・年金・外国の投資家などです。日本では、個人向け国債として個人も買えます
  • 金利の決まり方:その国が「きちんと返せる」と思われているほど低く、心配されるほど高くなります
  • 今回は:暴動と政治のゆれが重なった10月19日に、フランスの国債の金利が1日で0.15%上がりました

国債の金利は、ただの利息の数字ではありません。世界の投資家が、その国をどれくらい信用しているかを表す「信用のものさし」でもあります。だから、国債の金利が大きく動くと、ニュースになります。


よくある質問

フランスでは、何が起きたのですか

約4週間前に高校生が学校の設備不足に抗議したのが始まりで、物価の上がり方への不満も重なってデモが広がりました。10月17日(土)の全国デモの日から暴力と略奪が広がり、10月19日(月)には首相が一部の町に夜間外出禁止を指示しました。

国債の金利は、どれくらい上がったのですか

10月19日に、フランスの10年の国債の金利が、前の取引日の約4.79%から4.94%へ、1日で0.15%上がりました。1日の上げ幅としては、2025年3月以来の大きさです。10月のはじめには、一時5%を超えていました。

暴動のせいで、金利が上がったのですか

報道は「暴動が広がった日に金利が上がった」と並べて書いていますが、暴動だけが原因だとは書いていません。その前から、国の借金の大きさと、節約の予算が議会を通るかという不安があり、国債は売られやすくなっていたのです。

国債の値段が下がると、なぜ金利が上がるのですか

たとえば、100円で毎年5円の利息がもらえる借用書を、95円で買えれば、利息の割合は約5.3%になります。値段が下がるほど、新しく買う人にとっての利回りは上がります。国が次にお金を借りるときも、その利回りに合わせた金利を払うことになります。

ユーロとは何ですか

ヨーロッパの21の国が一緒に使っている共通のお金です。ユーロを使う国のお金の量や金利のもとは、ヨーロッパ中央銀行(ECB)が決めています。

日本の国債の金利も上がっているのですか

財務省が売り出している個人向け国債の「固定5年」は、10月に募集している分の金利が年2.39%です。10年の国債の金利は、10月19日に2.935%でした。フランスとは理由がちがいますが、どちらも「国にお金を貸すと、いくらの利息がつくか」を表す数字です。

投資をしてみたい人は、何を見ればいいですか

ニュースで国債の金利を見かけたら、「上がったか下がったか」と「報道が挙げている理由」の2つです。金利が大きく上がった国は、お金を貸す人が心配している国です。フランスについては、議会で節約の予算が通るかどうかが、次の見どころです。


おわりに ― ニュースは、自分のお金の話です

フランスの暴動のニュースから、国債の金利が、その国の信用を表すものさしになっている、というしくみを見ました。

第1回・第2回は中東の原油が、第3回はAIのお金が、第4回は金利(お金を借りるときのレンタル料)が、第5回は韓国の半導体が、第6回はアメリカの物価が、第7回は会社の業績の見込みが、第8回はみんなの心配の大きさが、第9回は株価指数の名簿が、私たちのお金に届くまでのつながりを見ました。

今回は、国にお金を貸すときの値段の話でした。

このシリーズのテーマは、世界で起きたことを1つずつ取り上げて、小学生でもわかる言葉で読み解くことです。

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筆者:株式会社スターストリーム・スタジオ 代表 清水 昴

タグ

#小学生でもわかる #資産形成
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