10月16日、インドネシアの株の値段をまとめた数字が、1日で11.57%下がりました。1998年1月以来の大きな下げです。きっかけは、オルカンの手本になっている株価指数を作っている、アメリカのMSCIという会社が「インドネシアを、新興国の株の名簿から外すかもしれない」と発表したことでした。
つまり、世界の投資家が使う「株の名簿」から外れそうになった、ということです。
戦争も、大きな会社の倒産もありません。それなのに、1つの会社の発表で、1つの国の株がここまで下がりました。今日は、このニュースから株価指数(いくつもの会社の株の値段をまとめた数字)の「名簿」が、世界のお金の流れを決めているしくみを見ていきます。
オルカンで積み立てをしている人にも、少しだけ関係のある話です。
こういうことがありました ― 寄り付きで8%下がり、取引が止まった
アメリカ時間の10月15日にMSCIが発表し、次の日の10月16日、インドネシアの株は取引が始まってすぐ約8%下がりました。取引は30分止まり、再開後も下がり続けて、11.57%安で終わりました。

時間の順番に並べると、こうなります。
- 10月15日(アメリカ・ニューヨーク):株価指数を作る会社のMSCIが、インドネシアを「新興国」の名簿から外し、どの名簿にも入らない「スタンドアロン」に移す案を発表しました。まだ決まったわけではなく、2027年4月30日まで意見を集め、2027年6月30日までに決めるとしています
- 10月16日(インドネシア・ジャカルタ):取引が始まると、インドネシアの株をまとめた数字(ジャカルタ総合指数)は約8%下がり、取引が30分止まりました
- 10月16日の終わり:5,863.78から5,185.10へ。678.67下がって、11.57%安でした。1日の下げとしては、1998年1月以来の大きさです
- 同じ日:お金の単位のルピアも安くなり、1ドル=約18,070ルピアと、7月下旬以来の安さになりました。外国の投資家は、インドネシアの株を売り越しました
1週間で見ると、10月9日の6,093.76から約15%下がっています。
そもそもどこ? ― インドネシアと、アメリカのMSCI
インドネシアは、東南アジアにある、たくさんの島からなる国です。株の取引所は、ジャワ島のジャカルタという大きな町にあります。

地図の色の意味はこうです。
- インドネシア(赤):日本から南へ、赤道をまたいで島が東西に長く並ぶ国です。お金の単位はルピアです
- 日本(青):私たちの国です
そして、今回の主役はもう1つあります。MSCI(エム・エス・シー・アイ)です。
MSCIは、アメリカのニューヨークの証券取引所に上場している会社で、世界の国や会社の株を選び、その値段をまとめた株価指数を作って毎日公表しています。この数字は、世界の運用会社・年金・銀行などに使われています。
つまり、世界の大きなお金が、MSCIの名簿を手本にして動いている、ということです。オルカンもその1つで、MSCIの株価指数と同じ動きをめざしています。だから、MSCIが名簿を変えると言うだけで、1つの国の株の値段が大きく動くことがあります。
なぜ株が売られたのか ― 名簿から外れると、お金が出ていく
MSCIの株価指数には「どの国の株を入れるか」という名簿があります。インドネシアはその名簿から外されるかもしれなくなり、「外れたら、指数に合わせて動く大きなお金が出ていく」と考えた人たちが、先に売りました。

つながりを順番に並べると、次のとおりです。
- 1つ目のつながり:MSCIがインドネシアを名簿から外す案を出した。MSCIは、インドネシアの株について「持ち主が誰なのか分かりにくい状態が続いている」「示し合わせて売り買いしている疑いがある」「取り締まりの実績が見えない」と説明しています。つまり、外国の投資家が安心して売り買いできる市場とは言いにくい、ということです
- 2つ目のつながり:名簿に合わせて動くお金が、出ていく見込みになった。投資信託(みんなから集めたお金を、まとめて株などに投資する商品)の中には、株価指数と同じ動きをめざすものがたくさんあります。こうした投資信託が中心に買うのは、指数の名簿に載った会社の株です。名簿から外れれば、その国の株を持つ理由がなくなり、売ることになります
- 3つ目のつながり:先回りして売る人が出た。スイスの銀行UBSは、指数に合わせて動くお金だけで約40億ドル、ほかの運用のお金も合わせると、さらに最大で約150億ドルが出ていくかもしれない、と見積もっています。「どうせ売られるなら、先に売っておこう」と考える人が増え、決まる前に値段が大きく下がりました
MSCIの4つの名簿
MSCIは、世界の国の株の市場を「先進国」「新興国」「フロンティア」「スタンドアロン」の4つに分けています。インドネシアは、いま「新興国」に入っていて、それを「スタンドアロン」に移す案が出ました。

- 先進国:アメリカ・日本など。市場が大きく、外国の投資家も入りやすい国です
- 新興国:これから伸びていく国。台湾・韓国・中国・インドなどが入っています
- フロンティア:新興国より市場が小さい国です
- スタンドアロン:新興国の指数にも、フロンティアの指数にも入らない国です。名簿の上では「どこにも入っていない」扱いになります
MSCIは、この分け方を毎年6月に見直しています。見るのは、経済の発展のぐあい、市場の大きさと売り買いのしやすさ、外国の投資家の入りやすさです。今回は、6月の定期の見直しを待たずに、案が出されました。
実は、インドネシアへの心配は前からありました。MSCIは2026年1月から、インドネシアの株を指数の中で増やすことを止めています。6月の見直しのときには「11月までに進展がなければ、フロンティアへ移すことも考える」としていました。
そして10月15日、「フロンティアに移すのでは、問題の深さに見合わない」として、さらに厳しいスタンドアロンへの案になりました。
名簿の決まりを、人気店ガイドとツアーにたとえると
上の説明(指数の名簿から外れると、名簿に合わせて動く投資信託が売るので、株の値段が下がる)を、人気店ガイドとツアーのお客さんにたとえてみます。

ある町に、有名な「人気店ガイド」があります。ガイドに載ったお店には、「ガイドに載ったお店だけを回る」と決めたツアーのお客さんが、毎日まとめてやって来ます。ツアーのお客さんは、味の好みでお店を選びません。ガイドに載っているかどうかだけで決めます。
ある日、ガイドの会社が「このお店は、次の版から外すかもしれません」と言いました。まだ決まっていないのに、町の人たちは「ツアーのお客さんが来なくなるなら、このお店の人気は下がる」と考えて、先にはなれていきます。
たとえの中のものと、本文の話の対応は次のとおりです。
- 人気店ガイドが、MSCIの株価指数の名簿にあたります
- 「ガイドに載ったお店だけを回る」ツアーのお客さんが、指数と同じ動きをめざす投資信託にあたります
- 「次の版から外すかもしれない」という知らせが、10月15日のMSCIの発表にあたります
- 町の人たちが先にはなれていくことが、決まる前に先回りして売られたことにあたります
だから、インドネシアの会社のもうけが1日で急に減ったわけではないのに、株の値段は大きく下がりました。名簿に載っているかどうかが、お金の流れそのものを変えるからです。
前にもあった、名簿の入れ替え
名簿から外れた国は、これまでにもあります。反対に、名簿の上の段へ上がる国もあります。
- アルゼンチン:2021年6月、新興国からスタンドアロンへ移すと決まりました。2019年9月から、外国の投資家がお金を自由に出し入れできなくなっていたことが理由です
- パキスタン:2021年9月、新興国からフロンティアへ移すと決まりました。市場の大きさや売り買いのしやすさが、新興国の基準に届かなくなったことが理由です
- ロシア:2022年3月、新興国からスタンドアロンへ移りました。投資家の多くが「いまは投資できない」と答えたためです
- ギリシャ:反対に、新興国から先進国へ上がることが決まっています(2027年5月)
インドネシア側はどう受け止めているのでしょうか。インドネシアの証券取引所の社長は「MSCIの独立性を尊重する。くわしい説明を求める。まだ意見を集める段階で、最終の決定ではない」と述べました。
つまり、まだ決まっていないので、これから改善を示して名簿に残れるように動く、ということです。株の取引を見張る役所の金融サービス庁(OJK)も、「国内の市場はこれからも有望で魅力的だと考えている」としたうえで、法の執行を強めると述べています。
日本の私たちには ― オルカンの中のインドネシアは、ごくわずか
オルカンも、MSCIの株価指数に合わせて動く投資信託です。ただ、オルカンの中でインドネシアが占める割合はごくわずかなので、今回の下げが積み立てに与えた影響は小さいと言えます。

オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー))は、MSCIの「ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)」という、世界の株をまとめた株価指数と同じ動きをめざしています。
運用している会社の月報(2026年9月30日時点)を見ると、国別の割合はアメリカが63.4%、日本が5.2%、台湾が3.3%と続きます。インドネシアは上位10か国に入っていません。
1万円を積み立てると、約6,340円がアメリカの会社の株に入り、インドネシアの会社の株に入るのは、ほんのわずかです。
MSCIの資料によると、新興国の株価指数の中でも、インドネシアの割合は2025年の終わりの1.16%から、2026年9月末には0.43%まで小さくなっていました。インドネシアの株の値段が年の初めから約40%下がっていたからです。

復習:オルカンの中身の割合は、何で決まるのか
第3回では、オルカンの中身の割合は、会社の大きさ(時価総額)で決まる、という話を見ました。

時価総額は、その会社の株を全部買ったらいくらになるかを表す「会社全体の値段」です。オルカンは、時価総額の大きい会社ほどたくさんお金を入れます。今回のインドネシアのように、株の値段が下がると時価総額も小さくなり、オルカンの中の割合も小さくなります。
インドネシアの取引所の株全体の値段は、この1週間だけで14.43%減りました。くわしく知りたい方は、こちらからどうぞ。

私たちが覚えておきたいこと
今回のニュースから分かるのは、自分の投資信託の中身は「株価指数の名簿」と「会社の大きさ」の2つの決まりで変わっていく、ということです。どこかの国が名簿から外れれば、その国の株は自動的に入らなくなります。
新しく名簿に入る国があれば、その国の株が入ってきます。
自分の投資信託が、どの株価指数と同じ動きをめざしているのかは、運用している会社の月報に書いてあります。1年に1回くらい、国別の割合のページを開いてみると、世界のお金がどこに集まっているのかが見えてきます。
投資の目線で見ると ― 名簿が動くときの追い風・向かい風
株価指数の名簿が動くと、外れそうな国の株には向かい風、新しく入る・上の段へ上がる国の株には追い風が吹きやすくなります。

- 向かい風:名簿から外れそうな国の株。指数に合わせて動くお金が出ていく見込みになるからです
- 向かい風:その国のお金(通貨)。外国の投資家が株を売ったお金を自分の国のお金に替えて持ち帰るので、安くなりやすくなります。今回もルピアが安くなりました
- 追い風になりやすい:名簿の上の段へ上がる国の株。新しく指数に合わせて動くお金が入ってくる見込みになるからです
ただし、名簿の見直しは、決まる前に値段に表れることが多いです。そのため「案が出た」のか「決まった」のかを、ニュースで確かめてから考えると、あわてて動かずにすみます。今回のインドネシアは、まだ「案が出た」段階です。
※特定の銘柄(株を売り買いできる1つ1つの会社)をすすめるものではありません。
こうした「お金の守り方」の考え方をまとめた資料は、記事の最後に置いておきました。
今日の言葉 ― 「株価指数」
株価指数は、いくつもの会社の株の値段を1つにまとめた数字です。どの会社を入れるかという「名簿」と、どれくらいの割合で入れるかという「決まり」で作られています。

- 身近な例:日経平均は、日本の代表的な225社の株の値段をまとめた株価指数です
- 誰が作る:取引所や新聞社のほか、MSCIのような会社が作っています
- 何に使う:投資信託の中には、株価指数と同じ動きをめざすものがたくさんあります。オルカンもその1つです
- 今回は:MSCIの株価指数の名簿から、インドネシアが外れるかもしれなくなりました
株価指数は、ただの「成績表」ではありません。名簿に載るかどうかで、世界の大きなお金がその国に入るか出ていくかが決まる、「お金の通り道」でもあります。だから、株価指数の名簿の入れ替えはニュースになり、ときには1つの国の株を大きく動かします。
よくある質問
インドネシアの株は、どれくらい下がったのですか
10月16日に、インドネシアの株をまとめた数字(ジャカルタ総合指数)が、5,863.78から5,185.10へ11.57%下がりました。1日の下げとしては、1998年1月以来の大きさです。1週間では約15%、年の初めからは約40%下がっています。
MSCIは、どんな会社ですか
アメリカのニューヨークの証券取引所に上場している会社です。世界の国や会社の株を選んで、その値段をまとめた株価指数を作っています。使っているのは、世界の運用会社・年金・銀行などです。
インドネシアは、もう名簿から外れたのですか
まだです。10月15日に出たのは「外す案」で、MSCIは2027年4月30日まで意見を集め、2027年6月30日までに決めるとしています。それまでは、インドネシアは新興国の名簿に入ったままです。
なぜ、決まる前にこんなに下がったのですか
名簿から外れれば、指数に合わせて動く投資信託が、インドネシアの株を売ることになります。「どうせ売られるなら、先に売っておこう」と考える人が増え、決まる前に値段が下がりました。
スイスの銀行UBSは、指数に合わせて動くお金だけで約40億ドルが出ていくかもしれない、と見積もっています。
スタンドアロンとは何ですか
MSCIの4つの名簿(先進国・新興国・フロンティア・スタンドアロン)の1つで、新興国の指数にもフロンティアの指数にも入らない国のことです。2021年のアルゼンチン、2022年のロシアが、新興国からスタンドアロンに移りました。
オルカンで積み立てています。影響はありますか
オルカンは、MSCIの世界の株をまとめた株価指数(ACWI)と同じ動きをめざす投資信託です。月報(2026年9月30日時点)では、アメリカが63.4%を占め、インドネシアは上位10か国に入っていません。
そのため、今回の下げが積み立てに与えた影響は小さいと言えます。
積み立てをしています。何を見ればいいですか
自分の投資信託が、どの株価指数と同じ動きをめざしているかと、国別の割合の2つです。どちらも、運用している会社の月報に書いてあります。
インドネシアについては、MSCIが決める2027年6月までに、インドネシアの取引所や役所が改善を示せるかどうかが、次の見どころです。
おわりに ― ニュースは、自分のお金の話です
インドネシアの株が1日で11.57%下がったニュースから、株価指数の名簿に載るかどうかで、世界のお金がその国に入るか出ていくかが決まる、というしくみを見ました。
第1回・第2回は中東の原油が、第3回はAIのお金が、第4回は金利(お金を借りるときのレンタル料)が、第5回は韓国の半導体が、第6回はアメリカの物価が、第7回は会社の業績の見込みが、第8回はみんなの心配の大きさが、私たちのお金に届くまでのつながりを見ました。
今回は、世界のお金の「通り道」を決める名簿の話でした。
このシリーズのテーマは、世界で起きたことを1つずつ取り上げて、小学生でもわかる言葉で読み解くことです。
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