遠い中東の事件は、原油と円という2本の道を通って、日本のガソリン代と電気代に届きます。日本は原油の9割以上を中東から買っていて、しかも代金はドルで払うからです。
この2本の道が分かると、世界のニュースを見たときに「次に何が上がりそうか」を自分で考えられるようになります。
この記事は「こういうことがありました → 今日はこれを学びましょう」の順で進みます。今日のニュースは、10月7日に中東で起きた空港への攻撃です。
こういうことがありました ― イエメンの武装組織が、サウジアラビアの空港を攻撃
10月7日、中東のイエメンの武装組織「フーシ派」が、サウジアラビアの空港をミサイルとドローンで攻撃しました。
狙われたのは、イエメンの港町アデンの空港と、隣の国サウジアラビアの空港です。アデンでは、着陸する直前の飛行機が、行き先を変えて別の空港に降りました。
日本のテレビでは、ほとんど大きく扱われていないニュースです。それでも、このニュースは日本のガソリン代とつながっています。なぜつながるのかを、ここから順番に見ていきます。
そもそもイエメンとサウジアラビアはどこにある? ― 石油がたくさん出る「中東」の話です
舞台は中東、つまりアジアのいちばん西のはしにある、石油がたくさん出る地域です。

地図の色の意味はこうです。
- サウジアラビア(オレンジ):中東でいちばん大きな国です。石油を売ってお金持ちになった国で、日本が使う原油の約4割はここから来ています
- イエメン(赤):サウジアラビアの南どなりにある国です。10年以上、国の中で2つの勢力が戦っています
- イラン(灰色):サウジアラビアと海をはさんで向かい合う大きな国です。サウジとは長く対立してきました
- 日本(青):くらべるために色を付けました。中東から日本までは、タンカーで原油を運んでいます
誰と誰がもめているの?
イエメンの中でもめているのは、次の2つのグループです。
- フーシ派:今の政府に反対して、武器を持って戦っているグループです。応援しているのはイランです
- イエメンの政府:フーシ派と戦っている側で、南の港町アデンが本拠地です。応援しているのはサウジアラビアです

たとえるなら、ある家の兄弟げんかに、近所の仲の悪い2軒がそれぞれ味方についている状態です。今回は、イランが応援する側が、サウジアラビアの家の窓に石を投げた形になります。
遠い国のニュースがガソリン代に届く「2本の道」
中東の事件は、「原油の道」と「円の道」の2本を通って、日本のガソリン代に届きます。

1本目:原油の道 ― 「届かないかも」で値段が上がる
サウジアラビアは世界でも指折りの産油国です。しかもイエメンの目の前の海は、紅海(こうかい)という海の入り口で、原油を積んだ船(タンカー)が毎日通っています。
そこで攻撃が起きると、「原油が届かなくなるかもしれない」と世界中の人が心配します。欲しい人が多いのに、手に入りにくくなりそうだと、ものの値段は上がります。お祭りの日に、屋台の焼きそばが残り少なくなると、急いで買う人が増えるのと同じです。
実際に、国際的な原油の値段(ブレント)は、10月8日に1バレル約102ドルと、100ドルを超えました。1バレルは約159リットルで、ドラム缶より少し少ないくらいの量です。
2本目:円の道 ― 原油はドルで買っている
日本は原油をほとんど海外から買っていて、代金はドルで払います。
いまは1ドルが約158円です。たとえば1ドルが100円のときなら、100ドルの原油は1万円で買えます。1ドル158円なら、同じ原油に1万5,800円を払うことになります。円が安くなる(円安)と、同じ原油でも日本が払うお金が増えるのです。
つまり今の日本は、原油そのものの値上がりと、円安の2つが重なって、二重に高い原油を買っている状態です。この原油からガソリンが作られるので、ガソリン代も上がりやすくなります。
なぜ電気代まで上がるのか ― 燃料の値段が、数か月おくれて電気代に入る
原油など、電気をつくる燃料の値段は、数か月おくれで電気代に反映される仕組みになっています。
日本の電気の多くは、石油や天然ガス、石炭を燃やしてつくっています。そのため電気代には、「燃料費調整額」という、燃料の値段に合わせて上がったり下がったりする部分が入っています。
この部分は、数か月前の燃料の輸入価格をもとに決まります。だから、ガソリン代はすぐに動きやすく、電気代はあとから少しずつ追いかけてきます。今日のニュースの影響は、しばらくしてから電気の明細に出てくる、ということです。
投資の目線で見ると ― 「誰が得して、誰が困るか」を考える
原油高や円安のニュースを見たら「得する会社と困る会社はどこか」を考えるのが、ニュースを投資に生かす第一歩です。

原油が高くなると、こうなりやすいです。
- 追い風:石油や資源を扱う会社です。売っているものの値段が上がるからです
- 向かい風:航空会社や電力会社、化学の会社など、燃料や原料として原油をたくさん買う会社です。仕入れが高くなるからです
円安も重なると、次のように分かれます。
- 追い風:車や機械など、海外で売って稼ぐ会社です。ドルで受け取ったお金を円にすると、金額が増えるからです
- 向かい風:海外から仕入れて、日本で売る会社です
ここで大事なのは、ニュースを「怖い話」で終わらせないことです。同じ出来事でも、困る人がいれば、得する人もいます。どちらの側に自分のお金を置いておくかを考えるのが、資産を守ることにつながります。
こうした「お金の守り方」の考え方をまとめた資料は、記事の最後に置いておきました。
今日の言葉 ― 「WTI」と「ブレント」
ニュースで原油の値段が2つ出てきたら、中東の不安が表れやすいのは「ブレント」のほうです。
- WTI(ダブリュー・ティー・アイ):アメリカでとれる原油の値段です
- ブレント:ヨーロッパの北海という海でとれる原油の値段です。中東の原油の値段の目安にも使われます
10月8日は、WTIが約90ドル、ブレントが約102ドルでした。同じ原油でも10ドル以上の差がつきました。中東で何か起きた日は、この差の広がり方にも注目すると、世界が何を心配しているかが見えてきます。
よくある質問
中東で事件が起きると、ガソリン代はすぐに上がりますか
国際的な原油の値段はその日のうちに動きますが、ガソリンスタンドの値段に表れるまでには少し時間がかかります。お店にあるガソリンは、前に仕入れたものだからです。
日本は原油をどこから買っていますか
9割以上が中東からです。資源エネルギー庁の資料では、2025年の輸入先はアラブ首長国連邦が約43%、サウジアラビアが約39%で、この2か国だけで8割を超えます。
フーシ派とは何ですか
イエメンで、今の政府に反対して武器を持って戦っているグループです。首都サヌアを含む北側をおさえていて、イランが応援しています。
なぜ円安になるとガソリン代が上がるのですか
日本は原油をドルで買っています。1ドルが100円から158円になると、同じ100ドルの原油に払うお金は、1万円から1万5,800円に増えるのです。
電気代にも関係がありますか
あります。電気代には燃料の値段に合わせて変わる「燃料費調整額」が入っていて、数か月前の燃料の輸入価格をもとに決まります。原油が高い状態が続くと、あとから電気代も上がってきます。
原油が上がると、どんな会社が得をしますか
石油や資源を扱う会社は、売るものの値段が上がるので追い風になりやすいです。反対に、航空会社や電力会社など、燃料を大量に買う会社は向かい風になりやすいです。
世界のニュースを投資に生かすには、何から始めればいいですか
1つのニュースごとに「得する会社と困る会社はどこか」を考えてみることです。慣れてきたら、「原油が上がる」「円が安くなる」など、自分の予想を書いておき、数日後に当たったかを確かめると、ニュースを読む力がついていきます。
おわりに ― ニュースは、自分のお金の話です
中東の空港への攻撃も、原油と円の2本の道をたどれば、私たちのガソリン代と電気代、そして持っている株や投資信託の話になります。日本のニュースは日本の話が中心ですが、お金は世界とつながって動いています。
このシリーズのテーマは、世界で起きたことを1つずつ取り上げて、小学生でもわかる言葉で「今日はこれを学びましょう」と読み解くことです。
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