こんなニュースがありました。動画配信の会社ネットフリックスが、社員の約6%にあたる約1,000人を減らすと、10月14日に社員へ知らせました。「人を減らす」と聞くと、会社が困っているように思えます。
ところが、その日の株の値段は、ほとんど動きませんでした。
今日は、このニュースを見ていきましょう。手がかりになるのは、株の値段は「いまのもうけ」より「これからのもうけの見込み」で動く、というしくみです。そして、その見込みを会社が自分で出したものが、今日の言葉の業績見通しです。
この記事は「こういうことがありました → 今日はこれを学びましょう」の順で進みます。
こういうことがありました ― ネットフリックスが約1,000人を減らす
10月14日、ネットフリックスのいちばん上の2人が社内のメモで、社員の約6%にあたる約1,000人を減らすと知らせました。

時間の順番に並べると、こうなります。日付はアメリカの日付です。
- 10月9〜10日:アメリカのメディアが「約800〜850人を減らすらしい」と、先に伝えていました
- 10月14日:会社の共同CEO(会社のいちばん上の役目を2人で分けている人)のテッド・サランドスさんとグレッグ・ピーターズさんが、社内のメモで約1,000人を減らすと知らせました。アメリカのNBCやCBS、日本のNHKも伝えています
- 10月14日の株:70.46ドルから70.57ドルへ。0.16%しか動きませんでした
- 10月15日の株:72.61ドルへ。2.89%上がりました。ただ、この日は証券会社がネットフリックスの株に「買い」の評価を出したことも、理由に挙がっています。人を減らしたから上がった、とは言い切れません
ネットフリックスの株は、2025年11月に1株を10株に分けています。だから、1株の値段は70ドルくらいになっています。
そもそもどんな会社? ― アメリカの動画配信の会社
ネットフリックスは、アメリカのカリフォルニア州に本社がある、映画やドラマをネットで見られるようにしている会社です。

地図の色の意味はこうです。
- アメリカ(赤):ネットフリックスの本社は、西の海ぞいのカリフォルニア州ロスガトスという町にあります。株は、東のニューヨークの市場で売り買いされています
- 日本(青):私たちの国です。日本でも、月に890円(広告つき)からのプランで見られます
会社の大きさは、こんな感じです。
- 社員は約1万6,000人(2025年の終わり)。今回の約1,000人は、その約6%です
- 4〜6月の3か月の売上は約126億ドル(日本円で約2兆円)で、1年前より13%増えました
なぜ人を減らすのか ― 社内のメモに書いてあったこと
ネットフリックスの社内のメモには「事業は好調で、1年の見通しは達成できそう」と書いてありました。困っているから減らすのではなく、人とお金を置く場所を見直すため、という説明です。

メモと報道から、次の3つが分かりました。
- 事業は好調:2人は「1年の見通しは達成できそう」と書いています。つまり、会社が前もって出していた「今年はこれくらい売れて、これくらいもうかる」という見込みには届きそうだ、ということです
- 思ったほど速く伸びていない:サランドスさんは「思っているほど速く伸びていない」とも書いています。つまり、もうかってはいるけれど、伸び方が物足りない、ということです。2026年の前半に世界で見られた時間は約970億時間で、1年前より2%しか増えていません
- 人とお金の置き場所を見直す:主に減るのは、サービスを作る部門・技術・法務・人事の人たちです。AIを理由にした、という報道はありません
もう1つ、大事な背景があります。ネットフリックスの株は、今年のはじめから約2割下がっていました。7月の決算(会社が3か月ごとに、売上やもうけの成績を発表すること)で、7〜9月の売上の見通しが、市場の予想に届かなかったからです。
つまり、株を持っている人たちは「伸びが鈍ってきたのでは」と心配していた、ということです。
人を減らすと、株は上がる?下がる?
人を減らすと、働く人に払うお金(人件費)が減るので、もうけは増えます。でも、株が上がるかどうかは「なぜ減らすのか」で変わります。
復習:株は「これから先のもうけ」で買われている
株は、いまのもうけより、これから先のもうけへの期待で買われています。このシリーズの第6回では、それを「未来のおこづかい券」にたとえました。

第6回では、遠い先のもうけに期待して買われている株ほど、金利(お金を借りるときのレンタル料)が上がると値下がりしやすい、という話を見ました。今回の話も同じ考え方の上にあります。株の値段は、その会社が「これからどれくらいもうけそうか」という見込みで決まります。
くわしく知りたい方は、こちらからどうぞ。

2つの場合
人を減らす理由には、大きく分けて「むだを削るため」と「売れなくなったから」の2つがあります。

- むだを削るため:売上は伸びているけれど、人が多すぎるので減らす場合です。費用が減るぶん、これからのもうけの見込みは増えます。株は下がりにくくなります
- 売れなくなったから:お客さんが減って、売上が落ちたので減らす場合です。人を減らすのは「この先も売れない」という合図になります。株は下がりやすくなります
海外の研究では、人を減らすと発表した会社の株は、平均すると下がっていました。ただし、むだを削るなど先を見た削減には株はあまり反応せず、売れなくなったことを示す削減では下がっていました。減らす人数が多いほど、下がり方も大きくなっていました。
ラーメン屋で考えると
上の説明(人を減らす理由が、むだを削るためなら株は下がりにくく、売れなくなったからなら株は下がりやすい)を、ラーメン屋にたとえてみます。
お店Aは、行列ができる人気店です。ただ、店員が多すぎて、お給料の支払いが重くなっていました。そこで店員を少し減らしました。お客さんは変わらず来るので、お店のもうけは増えます。
お店Bは、お客さんが減ってきたお店です。売上が落ちたので、店員を減らしました。お給料の支払いは減っても、お客さんが戻ってくるかは分かりません。近所の人たちは「このお店、大丈夫かな」と心配しはじめます。
たとえの中のものと、本文の話の対応は次のとおりです。
- 行列のできるお店Aが、むだを削るために人を減らす会社にあたります
- お客さんが減ったお店Bが、売れなくなったから人を減らす会社にあたります
- 近所の人たちの「このお店、大丈夫かな」という心配は、株を持っている人が、これからのもうけの見込みを下げること。株が売られるのは、このときです
ネットフリックスはどっち?
会社の説明はお店Aです。ただ、それが本当かどうかは、10月20日の決算で分かります。
ネットフリックスは「事業は好調」と言っていて、10月14日の株もほとんど動きませんでした。つまり、株を持っている人たちは、今のところ「お店Bのような、売れなくなったからの削減」とは受け取っていない、ということです。
ただ、「思ったほど速く伸びていない」という言葉もあります。つまり、会社自身も、伸び方には満足していない、ということです。7〜9月の決算は、アメリカの10月20日午後1時ごろ(日本時間では10月21日の朝5時ごろ)に出ます。
そこで、会社の業績見通しが当たっていたか、そして次の見通しがどうなるかを見ると、どちらの場合だったのかが分かってきます。
日本の私たちには ― S&P500の中のネットフリックス
NISAなどでS&P500(アメリカの代表的な500社の株の値段をまとめた数字)の投資信託を積み立てている人は、ネットフリックスの株も少しだけ持っています。
S&P500にお金を入れる投資信託(SPY)の10月14日の中身では、ネットフリックスは0.44%でした。1万円を入れていたら、そのうち約44円ぶんです。

だから、ネットフリックス1社の株が動いても、積み立てへの影響はほんのわずかです。
それよりも、今回のニュースで覚えておきたいのは見方のほうです。日本の会社でも「人を減らす」「見通しを上げる」「見通しを下げる」というニュースはよく出ます。そのたびに、株の値段はこれからのもうけの見込みで動く、と思い出すと、ニュースが読みやすくなります。
投資の目線で見ると ― 決算の季節の追い風・向かい風
決算の季節には、業績見通しを上げた会社に追い風、下げた会社に向かい風が吹きやすくなります。

- 追い風:業績見通しを上げた会社。これからのもうけの見込みが増えるので、株は上がりやすくなります
- 向かい風:業績見通しを下げた会社。これからのもうけの見込みが減るので、株は下がりやすくなります
- 向かい風:売れなくなったことが理由で、人を減らす会社。この先も売れないという合図になりやすいからです
ただし、みんながすでに予想していた見通しだと、発表しても株が動かないこともあります。だから決算のニュースは、「見通しが、みんなの予想とくらべてどうだったか」を分けて見ると、読みまちがえにくくなります。
※特定の銘柄(株を売り買いできる1つ1つの会社)をすすめるものではありません。
こうした「お金の守り方」の考え方をまとめた資料は、記事の最後に置いておきました。
今日の言葉 ― 「業績見通し」
業績見通しは、会社が自分で出す「これから、これくらい売れて、これくらいもうかりそう」という見込みです。業績予想とも言います。

- 誰が出す:会社が自分で出します。決算のときに、次の3か月や1年の売上やもうけの見込みを発表します
- 上方修正・下方修正:見込みを上げるのが上方修正、下げるのが下方修正です。上方修正は株にプラス、下方修正はマイナスに働きやすいとされます
- 今回は:ネットフリックスは7月の決算で出した7〜9月の売上の見通しが、市場の予想に届かず、株が下がりました。今回のメモでは「1年の見通しは達成できそう」と書いています
株の値段は、これからのもうけの見込みで動きます。業績見通しは、その見込みを会社が自分の口で言ったものなので、株の値段を大きく動かします。
テストの前に「次は80点くらい取れそう」と先生に言っておくようなものです。実際に90点を取れば「思ったよりできる」と見られ、60点なら「大丈夫かな」と見られます。
日本の会社のニュースで「見通しを上方修正」と聞いたら、この「次のテストの予想点を上げた」ことだと思うと、分かりやすくなります。
よくある質問
ネットフリックスは、何人を減らすのですか
社員の約6%にあたる約1,000人です。10月14日に、共同CEOの2人が社内のメモで社員に知らせました。先に出ていた報道では約800〜850人とされていましたが、会社が知らせた数は約1,000人でした。
なぜ人を減らすのですか
メモでは「事業は好調で、1年の見通しは達成できそう」としたうえで、人とお金を置く場所を見直すため、と説明しています。サランドスさんは「思っているほど速く伸びていない」とも書いています。AIを理由にした、という報道はありません。
人を減らすと発表して、株はどうなりましたか
発表の日の10月14日は70.57ドルで、0.16%しか動きませんでした。次の10月15日は72.61ドルで、2.89%上がりました。ただ、この日は証券会社が「買い」の評価を出したことも理由に挙がっていて、人を減らしたから上がったとは言い切れません。
人を減らすと、株はふつう上がるのですか
いつも上がるわけではありません。海外の研究では、人を減らすと発表した会社の株は、平均すると下がっていました。むだを削るための削減なら株はあまり反応せず、売れなくなったことを示す削減なら下がりやすい、という結果でした。
日本のネットフリックスの料金は上がるのですか
今回の人を減らす話と、日本の料金を結びつけた報道はありません。日本の料金は、広告つきのプランが月890円、スタンダードが1,590円、プレミアムが2,290円です。最後に上がったのは2024年10月です。
S&P500を積み立てています。関係ありますか
S&P500にお金を入れる投資信託(SPY)の中で、ネットフリックスは0.44%(10月14日)です。1万円のうち約44円ぶんなので、1社が動いても積み立てはほとんど変わりません。
それよりも「株はこれからのもうけの見込みで動く」という見方を、ほかのニュースにも使えることのほうが大事です。
次は、何を見ればいいですか
ネットフリックスの7〜9月の決算です。アメリカの10月20日午後1時ごろ、日本時間では10月21日の朝5時ごろに出ます。
売上やもうけが会社の業績見通しどおりだったか、そして次の見通しを上げたか下げたかを見ると、今回の削減が「むだを削るため」だったのかが見えてきます。
おわりに ― ニュースは、自分のお金の話です
ネットフリックスが約1,000人を減らすというニュースから、株の値段は「これからのもうけの見込み」で動くこと、そして人を減らす理由によって株の受け取られ方が変わることを見ました。
第1回・第2回は中東の原油が、第3回はAIのお金が、第4回は金利が、第5回は韓国の半導体が、第6回はアメリカの物価が、私たちのお金に届くまでのつながりを見ました。今回は、1つの会社のニュースを、株の値段の決まり方から読み解きました。
このシリーズのテーマは、世界で起きたことを1つずつ取り上げて、小学生でもわかる言葉で「今日はこれを学びましょう」と読み解くことです。
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